今年の7月にリリースされた「AlisTempolis」は、スマホでプレイできる「ファミコン時代を彷彿とさせる」古き良きRPGテイストのゲームタイトルで、制作しているTownSoftさんではこれまでに10本以上の作品を世に送り出している。今回はこの「AlisTempolis」について、TownSoftさんからのインタビューをいただけたので、その模様をお届けする。
『AlisTempolis』の制作者TownSoftさんへのインタビュー
-本日はよろしくお願いします。では、簡単に自己紹介をお願いできるでしょうか。
TownSoft:TownSoftとしてゲームの制作を行っています。元々自分はSESというか、フリーランスで働いていて、マネジメントをやってました。
-開発ではなくて、マネジメントされてたんですね!
TownSoft:そうですね。そのときにiPhoneの3GSがでて、そこ向けにアプリが作れるっていうのを知り、自分でOpenGLESを使ってゲームを作り始めました。そこから仕事をしながらゲームを作るっていう生活を七、八年ぐらい続けて、「偽りの物語」とか「勇者の冒険」とかその辺が少しずつ売れ始めたので、そこから段々とゲーム制作一本にシフトしていきました。
-ということは、いまの開発ってすべてお一人でやられているんでしょうか?
TownSoft:全部1人でやってます。元々小学生くらいからプログラムが好きで、小学校の友達の家でたまたまN88Basicっていう、すごく古いプログラム言語を触ってからプログラムの道に行きたいと思っていて、仕事も一時期マネージャーとかもやってたんですけど、やっぱりプログラマーに戻ったりとかしていました。
目指したのは冒険の高揚感を味わえる「手軽なハクスラ」
-本作「Alis Temporis」はどういったゲームなのか、特徴や魅力などについて教えてください。
TownSoft:手軽にできるハクスラみたいなものを目指して作ったゲームです。元々自分は放置ゲームばっかり作っていたんですけど、昔「ディアブロ」っていうゲームを初めてやったときにすごくハマって、当時は1作目だったんですが日本人のプレイヤーは少なくて、海外のプレイヤーに混じって一緒に戦ったりしていて……で、アイテム拾ったときの高揚感みたいなものをすごく憶えているんですよね。今作では放置もできるんだけど、できればそのハクスラ的なアイテム拾ったときの嬉しさとか、高揚感みたいなものを伝えたいと思っていました。
-以前メールでやり取りさせて頂いたときに、過去作の「Seek of Souls」を作成したときは「ルナティックドーン2」などの影響があったというふうに伺ったんですが、今作ではそのあたりはいかがでしょう?
TownSoft:僕がすごく影響を受けたゲームだと、ドラクエとかウィザードリィももちろんなんですけど、ルナティックドーンとかディアブロみたいな、自由な冒険ができるゲームっていうものにすごくインスピレーションを受けていると思っています。ただ、今作では全体としてはそういう自由な冒険よりも、ハクスラ的な要素が強くなったかなと考えています。
TownSoft:「Seek of Souls」だと町で依頼を受けて、その依頼を解決していくと町での名声が上がったり、暗殺みたいな依頼を受けちゃうと逆に下がったりして、街に入ると衛兵に襲われる……とかそういったゲームだったんですが、今回ではそうした要素はうまく取り入れられなくて、一部共通している要素もあるんですが、ゲームとしてはもうかなりハクスラ寄りになっていると思います。
-ゲームのシステムとしてはモンスターの育成ができることなども面白いポイントですね。
TownSoft:そうですね、このゲームではモンスターを仲間にして育てることが出来るんですが、モンスターによっては固有のスキルを持っていて、特定のモンスターとジョブの組み合わせがすごく強力だったりします。例えば、モンスタースキルの「素手3回攻撃」+「武道家」を組み合わせるとすごく火力が上がったり、「両手装備+杖装備」+「剣士」で「右手:剣」+「左手:魔法の杖」を装備させて剣と魔法ダメージを与える……とか。いろいろな組み合わせがあるので、どのような成長をさせるかを考えて楽しんでいただけると嬉しいです。
-本作がリリースされて2ヶ月ほど経ちますが、ユーザーさんからの反響などはいかがでしょうか?
TownSoft:けっこう両極端な意見を頂いていて、これまで私の作っていたものは放置系のゲームが多かったので、過去作をプレイしてくれていた人たちの中でも「ちょっとこれはぜんぜん違うね」っていうので離れてっちゃうユーザーさんがいる一方で、「すごくドキドキわくわくして楽しい!」って言ってくれるユーザーさんもいらっしゃいます。今回のゲームでは放置ゲーム以外の新しいユーザーさんにも遊んでほしいと思っていたので、そういう意味では半分成功しつつ、やっぱ半分のユーザーを失っちゃったかな、という感じです。
-今作のシナリオでは、過去と現代の物語を随時切り替えて遊べるようになっていますが、これは面白い点だなと思いました。これはどういった工夫だったんでしょうか?
TownSoft:実はこれ、すごく深く考えたというよりも思いつきで作っている部分も大きいんですよね。でも二つ作ってみたら、なんかやっぱりちょっと縛りあった方が面白いなと思うようになりました。
TownSoft:「AlisTemporis」は過去編の方が進みやすくなるように調整しているんですよ。で、過去だと結構簡単にクリアできたダンジョンが現代だと結構難しかったりする。キャラクターは過去編と現代編で移動させることはできないんですが、共通して使えるものもあったり、あとはダンジョンのボスなんかも共通だったりします。過去編で一度クリアしたダンジョンを、現代ではどうやってクリアしようかなっていうのを考えながら楽しんでもらえればなと思っています。
-そういえば、私がプレイしたときも過去だと最初から仲間がいるので、とりあえず過去編で進めてお金を稼いでから現代編進めるか、みたいな感じになりました。
TownSoft:そういうふうな意図的な場所があります。ただこの過去編と現代編があることで、フラグの調整が少し複雑になってしまい、あるシナリオをすっ飛ばしても、次のシナリオが進められてしまうとか、そういうバグを出してしまったなんていうこともありました。一応そこはユーザーの方から指摘を受けて、バージョン1.4ぐらいで修正しています。
最も苦労したバランス調整は一番のこだわりポイント
-本作を開発に至った経緯について、改めてお聞かせください。
TownSoft:本作は「ルナティックドーン2」というゲームにインスピレーションを受けて作った「Seek of Souls」とTownSoftで人気の「失われた世界」、「Vanitas」をかけあわせたようなゲームになっております。「ルナティックドーン2」を遊んでいたあの当時のワクワクしたあの感覚をゲームに取り入れたいと思ったところからこのゲームは始まってます。「この先には一体何があるんだろう?」を感じられるようなゲームを作りたいと思って作りました。
TownSoft:あと、ちょっと別の面としては、私が技術的に新しいことをやってみたかった、作ってみたかった、というところもけっこう大きいかなと思っています。簡単にまとめると、放置しても遊べる一方で、途中から自分で操作して遊ぶこともできる、というシステムにしたかったんです。放置ゲーム的なプログラムをそのままドラクエのコマンド型戦闘みたいな感じに移行して、バランスを整えてみたっていうイメージです。
TownSoft:これまでよく作っていた放置系のゲームだと、戦闘の処理がすべて内部で自動化されてしまうので、それを外から確認することはできないんですよね。なので今回は自分でコマンドを選択して戦闘できるものを作ってみたいな、実際自分のゲームのバランスがどれだけ良いか悪いかも知りたいなっていう、ちょっとそういった側面がありました。これはちょっとユーザーさん的には全然関心のない部分だとは思うんですけれども。
-なるほど。では開発にあたって特に苦労されていたことや、ご自身の中で強くこだわって開発してるのはどういった点でしょうか?
TownSoft:苦労した部分で言うと、バランス調整が一番苦労しました。リリース前に自分でも50回ぐらいはプレーし直していて、ある程度までは整ったなとは思うんですが、それでもやっぱり完璧にバランスが整えられたかというと、なんとも言えなくて、やっぱりこれがすごく難しいなと。
TownSoft:だからこのバランス調整部分をできるだけAIというか、システム的な計算に任せるようにしているのは、こだわったポイントの一つでもあります。例えばモンスターを作るときに、どんな強さにするのかというのは、モンスターの種類ごとにある程度のパラメータは機械的に自動算出していて、モンスターのレベルとタイプを入れると、おおまかなモンスターのひな形が作られるようになっています。
TownSoft:例えば「ドラゴン」系のモンスターを作る時、ドラゴンならこのくらいのステータスだよねっていうものは、初めに計算で勝手に出してくるようにしているんです。あとはユーザーのレベルを入れてそれをモンスターと戦わせるっていうシミュレーション用のプログラムが別にあって、そこで問題ない強さかどうかをチェックした上で、実際に投入してみて、最後にバランスを調整するっていう……あんまりユーザーさんからは見えない部分なんですけど、バランス調整の部分で苦しんでるんで、この部分はすごくこだわって作ったなって思っています。
-今後の展開やアップデートについてはどんなものを予定されているでしょうか?
TownSoft:いまは一旦ゲームの完結を目指してはいるんですが、ユーザーさんの方から「セット装備」みたいなのが欲しいという声が上がっているみたいで、勇者の剣とか、勇者の盾、みたいな。そういうものを次回のアップデートでこっそり追加してみようかなと思っています。
TownSoft:あとはギルド関連の機能もちょっと強化したいなと思っています。ギルドを育てるためのギルドポイントみたいなものがあるんですが、初期からやっているユーザーさんだと、もうこのギルドポイントの使い道がなくなってしまったりしているみたいで、このあたりもなにか修正を加えたいな……とは考えています。
作るのが楽しい!が原動力だった
-せっかくなので、ゲーム制作にかける想い、みたいなものをお聞きしてみたいのですが、ゲームの制作を続けられている理由みたいなものはあるのでしょうか?
TownSoft:自分が作ることを楽しみたいっていうのが一番大きいかなと思っていますね。ゲームの話ばっかりで恐縮なんですが、昔ファミコン時代に「桃太郎電鉄」を遊んだときに、「これって模造紙があれば作れるな」と思って、小学校6年生のときに模造紙でなんとか電鉄みたいなものを作って遊んでいたりしました。そうするとマップを自分で好きなように作れるので、日本とか海外とかそういういろんなマップを作って友達と遊んだりとか、ゲームブックを見たら自分でゲームブックを作ってみたりとかっていうふうなのをやってたので、小さい頃から何かを作るのが好きというか、ゲームを作るのがすごい好きだったんです。
TownSoft:なので、逆に言うとユーザーのために作るっていうのはあんまりしなかったので、そこがすごく苦労した場所です。自分のために作ったゲームって自己満なんで、全然売れない。ずっと9年間売れなかったっていうのを本当にユーザーに寄り添わなかったっていうのは結構あるかなと思っています。
-なるほど、そこからちょっとずつユーザーのためのゲームへと進歩してきて、いまがあるんですね。TownSoftさんのゲームは、過去のシステムを改良したりブラッシュアップして次作へ繋いでいるのも、そういうことの結果なんでしょうか。今後、将来的に作りたいゲームのイメージなどはあるでしょうか?
TownSoft:ルナティックドーン2の放置ゲーム作りたいですね。他のユーザーさんからも言われてるんですけど、冒険させながらも放置して成長させるっていうふうな……でも自由に冒険できて、どんどん犯罪したりするような人もいれば、街の英雄みたいになっていく人もいるっていう、すごく自由なゲームを作ってみたいですね。アートディンクさんが作ってくれれば絶対やるんだけどなあ。
-では最後になりますが、いまこの「AlisTemporis」を遊んでくれているユーザーさんに対して、一言コメントを頂けるでしょうか。
TownSoft:通勤などの短い時間でレベル上げを楽みながら、落ち着いた時間にじっくり攻略できるAlisTemporisを遊んで頂けると嬉しいです。ファミコン時代の懐かしさを楽しめるかと思います。今後も楽しいコンテンツを追加していくので、よろしくお願いいたします!
-本日はありがとうございました!
※本文中では敬称略
AlisTemporisについて
タイトル:AlisTemporis
ジャンル:放置RPG
価格:無料
対応機種:iOS/Android
公式Twitter:https://twitter.com/townsoft007
公式サイト:https://townsoft.jp/
(編集・執筆/ena)