『PUFF HOOK STUDIO』が手掛けるシナリオ重視のサイコスリラーADV『Recall: Empty Wishes』の開発者に、今回ゲームエイトライターがインタビューすることができた。本作の魅力や開発の裏話、満たされなかった願いを描いたシナリオなどについても聞くことができたので、ぜひチェックして欲しい。
インタビューさせて頂いた方の紹介
ーーではまず、簡単に自己紹介を頂いてもよろしいでしょうか?
シュアンス氏:
『Recall: Empty Wishes』の開発を行っているシュアンスと申します。
サイリン氏:
美術部分を担当しているサイリンと申します。
ヤン氏:
美術部分で主にキャラクター部分を担っているヤンと申します。
シンヨウ氏:
システム設計を担当しているシンヨウと申します。
ツハオ氏:
同じくシステム設計を担当しているツハオと申します。
ーー本日はよろしくお願いいたします!
ストーリー性を重要視した遊びやすいゲームを目指す
ーー本作は御社が手がける最初のゲームプロジェクトとお聞きしましたが、開発の経緯を教えてください。
シュアンス氏:
開発したキッカケとしては、大学時代の卒業制作課題でした。何を作ろうか考えた時に、どうせならストーリー性のある作品を制作しようと思ったんですよね。我々がストーリー性のある作品大好き集団というのも大きいですけど(笑)
そこで、映像撮影など候補がいくつかあったのですが、最終的にはゲーム開発を行うことになりました。
ーー個人的にもゲームなどをプレイした後に「この作品はこういうテーマを伝えたかったのかな?」と考えるのが好きなので、とても共感できます!本作の開発にかける想いをお聞かせください。
シュアンス氏:
個人的には、本作の開発を行えたこと自体、非常に幸運な出来事だったと思っています。本作を開発するまでは、ここまで大きな規模で何かを作ることがなかったのですが、先輩たちのサポートもあって、自分の思い描いていた理想のゲームを作ることができました。
ーー多くの方々の想いが詰まっている一作ということですね。本作は学生の頃から製作を行っているとのことで、学生時代の人間関係など、実体験がゲーム内にも反映されていたりするのでしょうか?
シュアンス氏:
舞台になっている学校や道中の一部シーンなどでは、学生時代の体験、要素が反映されています。現在構想中の要素として、よりリアルな体験などを、ゲーム内に追加しようかどうか悩んでいます。
ーーどのシーンが実体験をもとに作られているのか、考えながら進めるのも楽しそうですね。本作は『To the Moon』『The Coma』『返校 -Detention-』といったストーリー主導のゲームから着想を得ているとお聞きしました。どのような点で影響を受けたかのかを教えてください。
シュアンス氏:
『To the Moon』は本作同様に、ストーリーが主軸になっている作品なので、どのような流れにしたらより皆様に伝わるのかなどのストーリー部分、『The Coma』『返校 -Detention-』はゲーム性の部分で参考にしました。他にも、舞台の脚本や漫画など様々なものを参考にしています。
サイリン氏:
なんなら、本作のシナリオは元々舞台劇の脚本ですからね。色々な作品を参考にしつつ、ゲームのシナリオとして落とし込みました。
シュアンス氏:
特に、韓国の漫画『照明商店』はかなり参考にしましたね。
ーー元々は舞台劇の脚本から生まれたシナリオだったんですね。ということは、ストーリー部分の開発にはかなりこだわったのではないでしょうか?
シュアンス氏:
シナリオを進めることで、遊んでくれた方々に、様々な体験を届けられるようにすることにはこだわりました。具体的には、チャプターごとに操作するキャラが変わってくるので、物語を様々な角度から見ることができるようになる点などですね。本作では、5つのストーリーが展開されるのですが、全ては1つのストーリーに集約するようになっているので、どのような繋がりがあるのかを考えながら進めるとより楽しめると思います。
シンヨウ氏:
カジュアルに遊んで欲しい思いがあるので、遊びやすいゲームシステムにすることも意識しました。ゲーム自体の設計もそうですが、片手だけのキーボード操作でもプレイできるなど、分かりやすくシンプルな操作方法になっています。
ーーシナリオだけでなく、遊びやすさにもこだわっているんですね。ホラーを表現する方法はBGM、キャラの表情など様々ですが、本作で特にこだわったホラー演出は何になりますか?
シュアンス氏:
実は、そこまでホラー演出に関してはこだわっていないんですよね。というのも、本作は雰囲気を大事にしていまして、直接的に驚かせる要素は控えめになっています。なので、ホラー部分に関しては雰囲気を構成する要素のひとつとして考えてもらえると良いかなと思います。
シンヨウ氏:
開発的には、ホラーよりサスペンスを意識して制作していますね。明かりであるライトの使い方などが分かりやすくて、先が見えづらいことによる恐怖もあると思いますが、「ここには何があるんだろう」という探索の楽しみも感じられるようになっています。
ツハオ氏:
どちらかというと、謎解きのイメージが近いですかね。やっぱりゲームをプレイしていても謎解きの方が印象が強いですからね。あと、個人的にそこまでホラーゲームが好きではないことも理由にありますね(笑)。
サイリン氏:
演出としては、視覚的な要素はこだわってます。例えば、とあるシーンで一瞬だけ人が居たように見える演出などですね。日常の中に潜む非日常を、視覚的に楽しんでいただければと思います。
細部までこだわり抜いたピクセルアートで描かれる謎解き要素
ーー本作はピクセルアートを採用していますが、ピクセルアートならではの見てほしい表現はありますか?
サイリン氏:
個人的に『ib』や『魔女の家』といったピクセルアートのゲームが好きなので、本作の方でもかなり力を入れました。特に見てほしい箇所としては、背景やオブジェクトなどの小物系の表現です。実際、本筋のストーリーに影響を与えることはありませんが、細部まで注目して見てみることで、よりゲームを楽しめると思うのでぜひ確認していただけたらと思います。開発者的にも隅々まで楽しんでもらえる方が嬉しいですからね(笑)。
ーー個人的にもピクセルアートのゲームは好きなので、定期的にプレイしたくなりますね。本作は謎解き要素が結構あると思うのですが、どのような謎解きなのでしょうか?
サイリン氏:
ゲーム内には、ミニゲームのような感じで謎解きが配置されています。隠されている番号を見つけ出して、電話番号やパスワードを獲得、指定の箇所に入力することで次のステージに進める形式が多いですね。
シンヨウ氏:
さらに言ってしまうと、隠されている番号にはきちんと意味があります。ストーリーにおける重要なことが隠されていたりもするので、謎解きが得意な方にはぜひ挑戦して頂きたいです。
各々が内に秘めている満たされなかった願いがテーマ
ーー本作のテーマや伝えたいことを教えてください。
シュアンス氏:
本作のテーマは「満たされなかった願い」になっています。ゲームをプレイした皆様が、各々満たされない願いについて向き合って貰えたら、制作側としては嬉しい限りです。
ーー本作には感動的な要素も含まれているとのことですが、その点についてお聞かせください。
シュアンス氏:
本作では、兄弟喧嘩などの実際の日常生活で起こりうる出来事が多くなっています。プレイした方々が、ゲームの出来事なんだけど、実際に経験したかのような想像ができると思っています。
ヤン氏:
また、多くの方々に共感を得やすいように学園生活を舞台にしています。もちろん、各々感じることに違いは生まれると思いますが、こういう世界線もあったのかなと、可能性のひとつとして感動的な要素を体験して欲しいです。
読者に向けてメッセージ!
ーー最後にリリースを楽しみにしているユーザーへ向けて一言お願いいたします。
シュアンス氏:
ゲームをクリアした時に、まるで映画を観終わったかのような充足感を感じられる作品になっています。テーマとしては、実現できない願いなのですが、クリア後は、新たな希望や夢を抱いていただけるようになっているので、ぜひ手に取って遊んで頂けると嬉しいです!
ーーお忙しい中ご対応ありがとうございました!
『Recall: Empty Wishes』の概要
© DANGEN Entertainment 2017–2023
[取材協力]PUFF HOOK STUDIO
(編集・執筆/いの)