グラビティゲームアライズが開発を進めている”ワールドクラフトRPG”こと「神箱-Mythology of Cube-」の体験版が9月20日からPlayStation、Steam上で公開されている。ゲームエイトではこれに合わせ、プロデューサー陣の神崎氏、石井氏のお二方にインタビューさせていただくことができた。現在の体験版の内容から「神箱」のゲームが目指しているところまで、お聞きしてきた内容をあまさずご紹介する。
▲写真の左側から石井氏、神崎氏
「神箱」は「立方体(キューブ)」から始まったゲームだった。
-本日はよろしくお願いします。ではまず、早速ですが開発の経緯などからお聞きできるでしょうか。
神崎氏:グラビティグループとして、RPGで新規IPを立ち上げることをミッションとしていました。その第一弾として、立方体(キューブ)を使ったRPGを検討することになったのが始まりだったんです。
-え、立方体で、ですか……?
▲ゲーム内で”マナ”と呼ばれる立方体は、あらゆる場面に出てくるモチーフにもなっている。
石井氏:この立方体(キューブ)っていうものを最小単位とした世界を作って、それがバラバラになってしまっているから、その世界を直すための物語をロールプレイングの要素として載せていくっていうスタートだったんです。
-へええ、そんなふうに始まったゲームだったんですね!
神崎氏:さらに新規IPとして世界設定の作りこみを行うことになりました。『神箱』はバラバラになってしまった世界を修復していく……というゲームですが、それがどのような世界なのかの考証をやっていったんですね。
▲主人公の「修復者」は文字通りバラバラになった世界を修復する力を持っている。
神崎氏:例えばゲームの舞台となるゾフィール大陸は、それぞれ地域ごとによって気候も違うし土壌も違います。とれる鉱物、貴金属も違うし、生息している動物や収穫できる作物も違います。ゲーム内の表示では全て日本語なのでそこまで言及はしていないんですが、言語も設定上は地域によって差があります。国であれば外交はどうなっているか、軍事力はどう持っているか、そこに住む人々の生活や歴史とか、そういったところも含めて考証していきました。
▲最序盤のキャラクターのセリフの中にも、すでに世界観の壮大さがうかがえるような話も……
-す、すごい、「立方体」っていうアイディアから始まったものから、そこまで練り上げていったんですね。
神崎氏:冒険できるマップも、最初は今よりずっと小さかったんです。元々は2Dで作っていたのですが、3Dに変更することになったときにサイズが大きく変わりました。
広い世界を冒険をしていると感じていただけるように、開発チームとも相談をして、マップを当初のサイズの3倍にしてもらうことになったんです。でもそのマップ上に街などを配置してみたら、隣の街との距離が近く感じたり、城下町などは巨大な街にしないと雰囲気がでないよねということで、街を拡張するために、さらにマップを3倍にしてもらって、現在は当初の9倍サイズになっています。
-とんでもないボリュームですね。そうか、これだけマップが広いから途中でパンを補充できるような街を作ったりする必要があるんですね。
石井氏:そうですね、マップを広くしないと既存の街の継ぎ足しでどこまでも行けてしまうので、それを避けたかったんです。
▲神箱では、フィールドマップ上のどこでも好きな場所に施設などを建て、そこを新たな街にすることもできる。街はパン(食料)の供給拠点にもなるため、遠くに探索するためには欠かせない。
-まさかゲーム開発の経緯っていう話題でここまで話が広がってくるとは思いませんでした。「立方体」をつかったゲーム制作っていうお題がこの世界観に結びついて、ここまで広がってきたんですね。
神崎氏:ここからゲームにうまく落としこめたのは、ディレクターを務めていただいている今井秋芳さん(編注:『東京魔人學園伝奇』シリーズや『九龍妖魔學園紀』などを手掛けるゲームクリエイター)のお力が強かったですね。初めはパズル要素だけだったんですけど、バトルなども入っていきRPGとして進化を遂げていきました。
▲戦闘中、主人公はダメージを与えたり攻撃を受けることはないが、味方に”マナ”を付与することで戦闘の流れをコントロールできる。
現在の体験版でほぼシステムは完成!でも、これから追加される機能も……?
-9月20日から体験版が配信されていますが、こちらはどういった内容になっているのでしょうか?
石井氏:製品版で最初に冒険できる大陸の半分くらいまで……というイメージです。東京ゲームショウの試遊版だと橋を作った後に街を作って、そこで一旦終わってしまうんですが、体験版だと他にも大陸南側の一定範囲を冒険できるようになっています。
-マップとシナリオが制限されているけど、ゲームの基本的な機能に関しては全てこの体験版の中でも楽しめるような形になっているのでしょうか?
石井氏:まだ未実装のものもあるんですが、ほとんどの機能が遊べるようになっています。実装されている範囲のなかにもいろんな街があるんですが、その中にクエストが隠されていたり、ダンジョンを回ったり、そこを楽しんでいただくっていうのが体験版の範囲になっています。ダンジョンはシナリオの中に組み込まれてない、隠し要素に近いものです。
神崎氏:マップを回ってわざわざ探さないと触れられない要素ですね。
石井氏:今回の体験版では未実装なのですが、今後追加される要素として、武器に関する機能が大きく変わる予定です。ほかにも街同士で交易ができるシステムなどの追加も予定しています。どちらも準備ができ次第、公開を予定しておりますが、より「ワールドクラフトRPG」に相応しいシステムになるのでご期待ください!
神崎氏:今後検討している体験版アップデートでこういったものを体験していただきたいと思っていますので、お楽しみに!
目指しているのは「プレイヤーが自分自身で世界を創っていけるRPG」
-現在開発中のシステムが追加されることで、さらにできることが広がりそうですね。
神崎氏:冒険が好きな人は冒険をしてほしいし、世界を修復したい人は修復をしてもらってもいいし、パズルが好きな人はパズルを楽しんでもらいたいです。本作のゲームジャンルを「ワールドクラフトRPG」としているように「世界を創る」ゲームとして、プレイする人のスタイルに合わせて好きな遊び方をしていただきたいです。
石井氏:ゲーム設計的にはわかりやすいコンセプトで作られていまして、未知の場所を探索するために街を作って、そこを拠点に冒険できる範囲を広げて、さらに遠くに街を作って……っていうこのサイクル自体は非常にシンプルなものです。
-これ、食料っていうものが冒険で行動できる範囲を制限していて、その行動可能範囲を広げるために街を作らなきゃいけない。基本は冒険するRPGなんだけど、そのためには街づくりが必要で、その中にRPG的な世界観設定の要素がしっかりと繋がっているっていう……いやすごいですね。本当にRPGですか?
▲パンが尽きるとその場で力尽き、近くの街まで強制的に戻されてしまう。特に山道なんかでは移動速度も落ちるので食糧不足がつらいぜ……
神崎氏:パッと見るとシンプルなRPGに見えるんですが、やりこんでいくと要素がたくさんあって、奥深いゲームになっています。
石井氏:小難しく見せちゃいけないっていう今井秋芳さんのこだわりもあって、かなりシンプルめには見せてるんですよね。やり込もうとすると複雑になる感じです。
-私も何度か体験版を遊ばせていただいているんですが、そんなに考えなくても…というと雑ですが、誰でもするっと遊べてしまうような印象ですね。
石井氏:基本はそうですね。ただ、そこからもっと極めようとしたらプレイヤーさんが自分自身でいろいろ考えて、試してみなきゃいけないようになっています。世界を広げていくのは、プレイヤーさん自身にやって貰えれば、と。
神崎氏:1ゲームあたりにかかる時間はそんなに長くなくて、パズルとかも1分半とか2分もあれば終わるし、ボス戦を除けばバトルも軽めです。一つ一つのゲーム要素は非常に簡素になっていて、チーム全員が「いろんな人に遊んでもらいたい」という気持ちを大事にしながら開発しています。
-これ自体は使い古された言葉ではありますけど、すごく自由度が高いゲームですよね。必ずしもストーリーに沿って遊ぶ必要なんかも薄そうですし。
神崎氏:はい、自由に遊んでいただけます。ただメインストーリーもきちんとご用意しています。あるキャラクターがいて、その子と主人公の物語を進めていくことができるのですが、仲間にするまでの道中は1本の物語で繋がってるわけじゃなくて、マップを探索しているとどこかで出会って、開放されていくようになっているんですよ。
-なるほど、自由に冒険してる中でストーリーが繋がっていくんですね!
神崎氏:特殊イベントとして発生していく形なんです。そのイベントを踏むと、ようやくストーリーが走り始めます。
石井氏:仲間になる他のキャラクターも同様のイベント形式になってます。自由にどこへでも行って、仲間にしたら話が広がっていくっていう。
-まさに自分自身の冒険の中で物語ができてくるっていう感じなんですね。ちなみにこの仲間になるキャラクターっていうのは、数は最終的にはどれぐらいになるんでしょうか?
石井氏:10人いて、どこかに隠れています。仲間1人1人に固有のシナリオがあって、その仲間がいることによって発生する街のクエストもあります。
-色々お伺いして、単なるRPGではなくて、本当にいろんな要素のあるゲームなんだなというのが実感として分かってきました。「交易ができる」とか言われたタイミングでかなり雲行きが変わってきたな、という感じでしたけれども。
神崎氏:このゲームはサンドボックスだっていう人もいれば、ストーリー重視のJRPGだっていう人もいるし、遊ぶ人によってさまざまな受け取り方、楽しみ方をしていただける作品になっています。
▲これは知らない土地のマップを一マスずつ埋めていくのはめっちゃ楽しいんだよね〜。いにしえのRPGに通じるものもある気がする。
-本当にいろんな要素が入っているゲームタイトルだと感じます。RPGでもあるし、街づくりシムっぽくもあるし、ローグライクっぽい感じもしているし。
神崎氏:ゆえに新ジャンルとして、世界を創っていく「ワードクラフトRPG」としています!
-なるほど……!本日は非常に貴重なお話ありがとうございました!
神箱-Mythology of Cube-について
(編集・執筆/ena)