2025年3月26日(水)リリースの半リアルタイム制ストラテジー育成RPG『星落:深淵のエルピス』。今回『星落:深淵のエルピス』を制作しているHaoPlayにインタビューを実施した。ゲームシステムやキャラクターデザインのこだわり、ゲーム内BGMについて聞くことができたので、ぜひチェックしてみてほしい。
『星落:深淵のエルピス』の紹介
―本作のゲーム性について教えてください。
本作は半リアルタイムの戦術バトルシステムを採用し、自動戦闘によるオートバトルと任意のタイミングで発動できる総攻撃スキルを融合させています。本作では戦闘前と戦闘中の2パートに分かれた戦略が必要です。戦闘前にキャラクターを8人戦闘マスに配置しますが、敵陣を妨害したり突破による有利な戦況を作ったりと職業や特性を活かして編成することが重要です。
例えば、職業「異刃」は敵の前衛を迂回して後衛を直接攻撃できますが、狙われてしまうためヘイトの回避が必要になります。戦闘中も戦略性が非常に重要で、敵のスキル発動タイミングを見極めて妨害やカウンターを決める必要があります。
PvP、PvEともに総攻撃スキルのチャージ時間が長めに設定されているため、スキル発動のタイミング次第で戦局を一変させることも可能です。このようなゲームデザインによって、放置系ゲームの気軽さと戦略次第で戦闘がガラッと変わる奥深いプレイを楽しめるという2つの魅力を両立させています。
『星落:深淵のエルピス』の魅力
―本作の魅力を3つほど、理由と合わせて教えてください。
① 究極の時間節約とシンプルな操作性
戦闘面ではオートバトルによって操作のハードルを低くしています。一方で、「総攻撃」スキルの発動タイミングや職業の組み合わせ、戦闘配置といった戦略的要素がプレイに奥行きを与えています。
ゲーム全体のシステムも大幅に簡略化されており、ほとんどのコンテンツをスキップ、倍速、掃討などのワンタップ操作でサクッと進められます。デイリークエストも3分で完了できます。この速さは他のゲームと比べてもトップクラスであり、忙しい現代人の限られたスキマ時間にもピッタリです。
② シンプルなUIデザインとユニークなアートスタイル
本作はセミ厚塗りスタイルの立ち絵を採用し、水彩のような質感とLive2Dによる動きのある演出を融合させています。UIデザインはシンプルながらもJRPGらしい冒険の雰囲気が味わえます。
また、キャラクターを突破させると動く立ち絵が解放されたり、ストーリーでの会話中も視線の追跡や光と影が変化したりと、Live2Dが細かく作り込まれているため、より深い没入感を味わえます。こうした点も多くのプレイヤーから好まれると思います。
③ 懐かしいテーマと現代にマッチした資源入手の融合
本作は日本の定番ファンタジー(美少女を助けに行く、魔王との対決)をベースにしており、プレイヤーは『星落:深淵のエルピス』をプレイすることによって伝統的なJRPGの冒険のときめきを再び味わえます。また、各種資源の入手難易度を下げ、育成システムもシンプルに調整しています。資源の入手が容易になっているので、プレイヤーが好みのキャラクターを手軽に獲得し、自由に強力なパーティを編成できるようになっています。
キャラクターデザインについて
―キャラクターデザインがとても魅力的です。ティミーを例に、キャラクターデザインが完成するまでのプロセスを教えてください。また、デザイン・背景設定で特にこだわった点を教えてください。
面には見えない部分まで拘った性格
キャラクターデザインのプロセスでは、主に【性格】【背景設定】【ビジュアルデザイン】、この3つの要素を考慮しました。
ティミーを例に挙げると、「性格の設計」は表から見える性格として「活発で風変わり」な行動(年長者をからかったり、礼儀や作法を無視する等)を通じて、親しみやすい「小悪魔」のイメージを作り上げ、プレイヤーに強い第一印象を与えます。
表からは見えない深い部分の性格として、理性と思いやりを持っています。例えば使用人に丁寧に接し、年長者の憂慮に理解を示すことで、年齢以上の大人びた一面を見せます。
また、ギャップ要素として、甘やかされて育ってもわがままにならず、家族に頼りながらも自立を望むような「無邪気さと果敢さが共存する」という多面的な性格を作り上げています。
特徴を表現するために家族関係まで考慮した背景
ティミーの背景設定では家族関係も細部まで拘っています。家族が「全員名付け親になりたがる」「全員が訓練に付き合う」などの細部を通じて、過保護で溺愛された環境を具体的に描いています。
両親の心配や年長者の期待が見えないプレッシャーとして「愛情の鎖」となり、キャラクターが反発する動機を与えます。そして「従兄の冒険談」をきっかけに、「好奇心」を深淵への憧れという具体的な目標へと変化させます。
さらに、ティミーの13歳で試練に合格するという設定は、キャラクターの成長の軌跡を表現しながら、過度な主人公補正を避けるために「家族による密かな支援」という現実的な要素も組み込まれています。
アクセサリーにも意味を込めているビジュアル
ティミーの茶色のロングヘアと赤い瞳のコントラストが、貴族的な優雅さを表すと同時に冒険心や情熱をそれとなく伝えています。リボンは「上品さ」と「遊び心」を両立させた少女らしさを体現しています。
体型デザインは、155cmの身長とスリムな体型が少女らしさを際立たせています。やや大きめのバストは徐々に成熟していくこと、キャラクターが成長の過程にあることをさりげなく示しています。
また、衣装細部に込めたメタファーとして、リボンは単なる装飾品ではなく、「守られる存在」と「束縛からの解放」の矛盾のシンボルを表し、可愛らしいアクセサリーの下には、自由を求める魂が秘められています。
ティミーの射手としてのビジュアルは戦闘服と貴族的な衣装を融合させることで、彼女の「身分」と「能力」の間の葛藤と融合を表現しています。
まとめると、ティミーのデザインは「束縛と自由」という視覚的に象徴される対立や、「年長者たちの溺愛の中で目覚める」という物語の流れを通じて、愛らしい外見をキャラクターの奥深い魅力へと変えています。
世界観とストーリーについて
―ここまでの質問から、本作の世界観とストーリーも緻密に作り込まれていることがわかりました。より多くのプレイヤーに魅力を知ってもらうために、世界観と物語について紹介してください。
【世界観について】
ー天地創造とともに命が芽吹いたとき、この世界のどこかに永遠に腐敗した裂け目——「深淵」が生まれた。それはまるで光を貪る胃袋のように、恐怖、欲望、絶望を糧としている。文明が積み重ねた負の感情が臨界点を超えるたび、この魂の潰瘍は現実の法則を引き裂き、あらゆるものを混沌の渦へと引きずり込む。
最後の生存者のすすり泣きが虚空に消えると、深淵は飽食した悪夢のごとく一時の眠りにつき、新たな文明が再び暗き養分を育むのを待つ。この時代は無数の文明の灰燼の上に、剣と魔法によって世界の法則が再構築された時代。探検家たちは過去の屍を踏みしめながら深淵の奥へと進む。
ある者は「深淵」の真実を暴くために、ある者は嘘に包まれた宝を追い求めて、そして多くの者はその歩みの途中で、呪われた深淵とともに腐敗していくのだった。ー
【ストーリーの紹介】
ーかつて私は探検家だった。仲間たちとともに未知の深淵へと足を踏み入れてきたが、ある日、私たちは不幸にも伝説の「絶望の地」へと迷い込み、あの恐ろしい魔王と遭遇してしまった。魔王との戦いはあまりにも過酷だった。仲間たちは次々と倒れ、小隊は壊滅寸前に追い込まれた。だが、私はわずかな幸運と仲間の命がけの守りに支えられ、その惨事の唯一の生存者となった。
あの経験は私の心を打ち砕いた。かつて抱いていた探検への情熱や夢は一夜にして胸の奥底に封印され、私は自分の本当の気持ちから目を背けるようになった。それ以来、私は未知と危険に満ちた深淵から遠ざかり、学院で武芸や魔法を教える教師となり、生徒たちに深淵探検の知識や伝説を語っている。
しかし、運命の歯車はいつも予告なしに回り始める。ある朝、激しいノックの音が私を叩き起こした。眠たい目をこすりながら、ゆっくりと扉を開けると、そこには銀髪の少女が立っていた。彼女の白い腕には無数の傷が刻まれ、純白のワンピースはぼろぼろに引き裂かれ、まるで激しい戦闘から逃げ延びてきたかのようだった。
私たちの視線が交わったその瞬間、まるで時空を超えたかのように私はかつての自分を見た気がした。私は悟った。運命の歯車は再び回り始めたのだ。そして私はこの少女と共に再び未知と試練に満ちた冒険の道へと足を踏み出すだろう。自分自身を救うために。ー
ストーリーと世界観の紹介をしましたが、私たちがプレイヤーに最も伝えたいことは、いつ、どこで、どのような困難や苦境にあっても、粘り強く努力を続ければ、希望はあるということです。
声優について
―声優陣がとても豪華ですが、声優を選ぶ際に特に重視した点はありますか?
① 声質と役柄との相性 ② 感情の表現力 ③知名度と人気
私たちは主に【声質と役柄との相性】【感情の表現力】【知名度と人気】の3つの観点から声優を選んでいます。
最も重視する要件は、声優の声質がキャラクター設定とぴったり合っていることです。例えば、ツンデレキャラなら少し自分勝手な口調かつ高めで張りがある声質、無口・無愛想・無表情なキャラには冷静で淡々とした口調など。
重要な能力として声優が感情を素早く切り替えられるかどうかも見ています。例えば0.5 秒以内に「はにかみ」から「怒り」に切り替えたり、高音のふるえ声を長時間維持する(闇堕ちのシーン)といったものです。
また、呼吸音とセリフの比率を正確にコントロールするというのも求めていますし、アニメ界で人気の声優や、有名なアニメキャラクターの声を担当した声優といった知名度と人気の高さでも選んでいます。
テーマソングについて
―テーマソングの制作にも力を入れているとのことですが、テーマソング制作の背景やゲームのBGMの特徴などを紹介してください。
テーマソング『LIGHT BEYOND』
椎名豪氏が作曲を担当しています。日本のゲームやアニメ音楽界で高い評価を受けており、『鬼滅の刃』や『コードヴェイン』などの音楽にも携わっています。壮大な物語性と深い感情の表現力が彼の音楽スタイルです。『星落:深淵のエルピス』の異世界冒険や大魔王との戦いという壮麗な世界観にとてもマッチしています。
この曲はゲームの核となる感情、「希望と不屈」を表現しています。メロディは高揚感ある弦楽とコーラスを採用して探検隊の勇気を象徴し、そこに重く響くハーモニーを織り交ぜることで、深淵の未知と試練を暗示しています。
【BGMのアレンジとスタイル】
ゲーム内のBGMの作編曲は、ACE(工藤ともり、CHiCO)が担当しています。彼らは電子音とオーケストラ要素の融合で知られています。このスタイルは最近のゲームでは一般的で、特に戦闘やストーリー進行など、動的な変化を必要とするシーンに適しています。彼らのアレンジは、電子音が緊迫したリズムを、オーケストラが壮大さと深みを加えるなど、ゲームに多層的な聴覚体験を提供しています。
例えば深淵探索のシーンでは、重々しいコントラバスや環境音をメインに、神秘的な雰囲気を演出し、戦闘シーンでは、電子ドラムや金管楽器の音を加えて緊張感を高めます。このような複合的なスタイルによって、音楽はさまざまな場面にマッチし、プレイヤーの没入感を高めてくれます。
【メインメニュー音楽のランダム再生設計】
メインメニュー音楽の設計目標は、同じ曲が長時間ループすることでプレイヤーを飽きさせないようにすることです。そのため音楽を、例えば冒頭の軽快なイントロ、中盤の緊張感ある展開、終盤の希望への昇華など、いくつかのセクションに分けています。これらのセクションはランダムに組み合わせて再生されるため、メインメニューに入るたびに異なるバージョンの音楽が流れます。
この手法はダイナミックミュージックシステムの概念を取り入れており、ランダムなセクションを再生することで、音楽の新鮮さを保ちつつ、その魅力が長続きします。
【戦闘音楽のテンションアップとスキル効果音の処理】
戦闘音楽はゲーム音楽設計の核心部分であり、特に半リアルタイムの戦略バトルでは、緊張感と戦略性のバランスが求められます。キャラクターが必殺技を発動する際、急に音量を上げるような手法はメロディラインや感情の流れを乱す可能性があるため採用していません。
私たちの解決策はメロディ部分はそのままにして、パーカッション部分の割合を高めることでした。例えば、必殺技発動時にドラムやパーカッションの音を高めると、より強いリズム感が生まれ、プレイヤーの感情を盛り上げてくれます。この方法により音楽の連続性を保ちつつ、重要な瞬間のドラマ性が際立ちます。
【OSTとゲーム内音楽のミキシングの違い】
ゲーム内の特定の音楽が対応する画面内でBGMとして再生される場合、プレイ操作の妨げにならないよう、ミキシングは小さめな音量、ソフトなレベルに調整されます。しかし、OST(オリジナルサウンドトラック)モードで単独で聴く場合は、音量を上げてミキシングを最適化し、直接聴くのに適した状態にします。
この「Wミキシング戦略」は、プレイヤーの異なる利用シーンを考慮したものです。ゲーム内では、音楽が映像や操作とスムーズに融合することが求められる一方、OSTを聴く際には、音楽そのものの表現力がより重視されます。この設計によって音楽は二種類の状況において最高の体験を提供でき、この細やかな配慮がプレイヤーの音楽ニーズを満たします。
まとめると、『星落:深淵のエルピス』の音楽設計は、ゲームのストーリーやシステムを支えるだけでなく、プレイヤーのエモーショナルな部分を高めることにも力を注いでいます。テーマ曲の壮大なスケール感、BGMが生み出す没入感、そして革新的な音楽インタラクションの設計に至るまで、音楽を通してプレイヤーがゲームの世界に深く引き込まれ、冒険と戦闘の一瞬一瞬をリアルに感じられるよう願っています。
『星落:深淵のエルピス』の概要
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[取材協力]: HAOPLAY Limited
(編集・執筆/きりゅう)