10月8日、千葉の幕張イベントホールで、『APEX LEGENDS™』(以降「APEX」と表記)を中心としたeスポーツイベント「APEX LEGENDS™ e-elements DREAM MATCH supported by BYD ~王様からの招待状~」が開催された。ご存じの方もいるだろうが、実はこの「DREAM MATCH」、お笑いやミュージックライブなどのイベントが挟まれるなど、eスポーツの大会としてはかなり異色の内容となっている。
今回ゲームエイトでは、DREAM MATCHの開催前日に、大会の主催者であるアニマックスブロードキャスト・ジャパンの方からお話を伺うことができた。この一風変わったゲームイベントがどのように出来上がっているのかを伺ってきたので、その内容をお届けする。
かなりバラエティ的? 「見て楽しむ」ためのeスポーツイベント!
--本日は大変お忙しいところをありがとうございます!それではまず、挺屋さまがDREAM MATCHにどんな形で関わられているのか、簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか?
挺屋氏:
はい。プロデューサーの立ち位置で運営全般に携わっています。統括としてもうひとり別の人間がいるんですが、私の方は出演者さんとのやり取りであったり、現場の指揮をメインに取っているようなイメージです。
--ありがとうございます。では早速なんですが、「DREAM MATCH」というのはどういったイベントで、何を目指しているものなのでしょうか?メインとしては「Apex」の大会、eスポーツ的なゲームイベントっていう要素を持ちつつも、今回であればファッションショーであったりミュージックライブ、前回ではお笑いのライブなども同時に開催されていたり、かなり面白いことをされていますよね。
挺屋氏:
僕ら(アニマックス)っていわゆるゲーム業界的なファーストパーティではないので、うちが純粋なeスポーツ大会をやったとして、正直そこに価値はないだろうって思っているんですよ。じゃあどうすればちゃんと価値を出して行けるのかって考えたときに、僕らとしての強みである「エンタメ部分」をしっかり発揮して、その中でeスポーツを盛り上げていきたいっていう結論に至りました。eスポーツを始めたい、大会に参加してみたい!っていう人を増やすきっかけ作りになれればと思っています。
e-elementsのプロジェクトの中で「GAMING HOUSE SQUAD」っていう番組をやっているんですが、その制作をお願いしているのが「全力!脱力タイムズ」や「水曜日のダウンタウン」といった、エンタメ系のバラエティ番組などの制作や演出をしているFAT TRUNKさんっていうところなんですね。そういったエンタメに強い制作会社さんなんかともコミュニケーション取りながら、「DREAM MATCH」で何をするのかっていうのを決めたりしています。
--そういえば、大会のチーム編成とかも出演者さん自身の意思が入って決めるような形になっていましたが、あれもエンタメのための工夫というか、そうした狙いみたいなものがあったんでしょうか?
挺屋氏:
シンプルに全部こっちで決めちゃうっていうのは、やっぱり面白くないんですよね。演出として、僕らができるバラエティー的な見せ方というか、エンタメ的な見せ方の一つなのかなっていうところではありますね。
大会自体についても、最後まで飽きずに楽しめるようにしたいなと思っていますね。今回って試合が全部で6マッチあるんですが、2回ごとに勝者を決めるようになっています。こういうのって普通大会を通じて1人とか1チームの優勝を目指していくようなものが多いんですが、そうするとやっぱり最後の方って、そこに絡めないチームってのが出てきちゃうんですよね。見に来てくれているお客さんも応援したい出演者がいらっしゃいますし、あえて細かく区切って、それぞれのマッチごとにしっかり楽しんで応援してもらいやすい形にしています。
--e-elementsで運営されている番組もかなりエンタメ寄りというかバラエティーっぽいなーとは思っていたんですが、やっぱりそういった志向があったんですね。いわゆる純粋に競技性の高い大会を行っていくというよりも、どちらかといえばフェスみたいなものに近いイベントからeスポーツを盛り上げていこうということなんですね。
挺屋氏:
その要素は強いと思います。「DREAM MATCH」ではそれぞれテーマを設けていて、「ゲーム」っていうものはもちろんベースに入りつつ、別のものを入れているんです。第1回目は「お笑い」を入れたんですが、今回いろいろ話し合った結果取り込んだのが「ファッションショー」でした。
これも単なるファッションアイテムだけではなくて、ちょっとしたeスポーツらしいアイテムもいろいろ取り入れたりしています。一例ですけど、SteelSeriesさんのヘッドセットやキーボードを持ってもらうとか……
--へえ!ファッションの中にゲームガジェットも組み合わせて!
挺屋氏:
そうです。それからアパレルブランドさんにもご協力頂いているので、一要素としてeスポーツ的、ゲーム的な要素を取り入れつつ、かつおしゃれにファッションショーを魅せる……みたいなことをやってますね。なのでちょっと普通のファッションショーとは違う部分が見せられるんじゃないかと思っていますし、商品PRに繋がるような機会にもできたらいいなと思っています。
そういった繋がりからイベントへの協賛で盛り上げていただき、新たに興味を持ってもらう人口を増やすとか、新しいeスポーツの形として、こういうやり方もあるんじゃないのかなっていう提案の一つにもなると思っています。
--「DREAM MATCH」のようなイベントだと、ゲーム分野に限らない他業種の企業さんなんかも入ってきやすそうですね。
挺屋氏:
デバイスメーカーさんとか、PCメーカーさんとかってのが主になりがちではあるんですが、例えば今回で言うとメインスポンサーのBYDさんみたいな電気自動車のメーカーさんも加わって頂いていて、会場にも車を展示しました。これも単純な展示だけではなく、ファッションショーで車の前をランウェイにすることで映り込むような形で画作りをしたりして、イベントと違和感なく商品PRに繋がるようにと思っています。
今後はApex以外も含むイベントに?
--なるほど、ありがとうございます。今回は2回目の開催ですが、今後の開催では変えていきたいものとかってあったりされますか?
挺屋氏:
今後でいうと、Apexに限らずっていう形でやっていきたいなとは思っているんですよね。ただ難しい点もあって、競技性が高いゲームだとどうしてもエンタメ色が出しづらかったりするんですよ。その点でいうとApexっていうのはかなりバランスの良いタイトルだと思っていて、ストリーマーさんとかだけじゃなくて、芸能人の方で配信してる人なんかも結構います。これがプロゲーマーの方が中心に配信しているようなタイトルだと、出演者の方が限られてしまったりもするんです。
--プレイ人口だったりプレイヤー層によって、制限がかかってしまうんですね。
挺屋氏:
ゲームタイトルをどうしようってのは常に考えてるとこではあるんですが、そういったこともあって難しい問題でもあります。なので状況とか時期に合わせて今後も考えてきたいですね。例えば最近では『ストリートファイター6』なんかはすごく盛り上がりも感じているので、そういったところは面白いかな……とか思ったりとか。
--e-elements全体としてこのDREAM MATCHで目指しているものの方向性っていうものを、あらためてお聞きできますか。
挺屋氏:
さきほどもお話しましたが、エンタメを通じてeスポーツの競技人口を増やしたりとか、eスポーツという業界を盛り上げたいっていう気持ちがベースに合って、e-elementsとして取り組んでいることの集大成を、DREAM MATCHで表現したいと思っています。
僕らはeスポーツとしては後発であったので、いろんなことにチャレンジしていこうとは思っています。僕たちがこのプロジェクトを立ち上げてから、番組を開始したりとか、オンラインの大会をやってみたりだとか、ここまで組み上げるのに3年ぐらいかかってます。ただここまではちょうどコロナ禍と並走しているような状態だったのが、有観客でのオフラインイベントの開催もできるようになり、ずっとオンラインだけやっててもいいのかな?っていうのがあったんですよね。
DREAM MATCHの開催を決めたのはそういうタイミングでした。ElectronicArtsさんの方とも相談して、Apexの4周年のアニバーサリーのタイミングでもあったので、何か一緒にやらせていただきたいとお話をして……という流れで進んでいきました。
--集大成とおっしゃってましたが、ちょっと特別感を持ってやっているんですね。
挺屋氏:
そうですね。プロジェクトとしてはここを中心に組み上げていく形になっているのかなとは思っています。GHS Professionalというプロチームを運営していたりとか、小さな大会を開催したりとか、eスポーツにいろんなジャンルで関わっていけるような形をe-elementsとしては進めておいて、その大きな花火としてDREAM MATCHがあるっていうことかなと思っています。
オフラインでイベントを行うことで、eスポーツの世界に広がりを
--では最後になるんですが、今後「eスポーツをどう扱っていきたいのか」っていう、思いとか方向性みたいなものをお聞きできるでしょうか。
挺屋氏:
まずは1人でも多くの方たちに興味を持っていただきたいと思っています。で、そのきっかけの一つがe-elementsであったり、今回のDREAM MATCHであったりすればいいですね。競技に参加するってことが全てではないと思うんで、視聴であったりとか、今回みたいなイベントに参加してみたりだとか、そういう人口を増やすきっかけになってほしいなっていうところの思いが強いですかね。
--それこそが野球中継を観て楽しむみたいな。
挺屋氏:
そうです。サッカーとか野球とかってやっぱ当たり前のように、プロ野球であったりとか、Jリーグみたいな「観る」娯楽が存在しているじゃないですか。そういうふうになって欲しいですね。
eスポーツってやっぱり、オンラインで盛り上がりやすいことが大きな利点だと思っています。でもそれだけじゃなくて、もう少し外にも広がっていくような形、今回のイベントみたいにオフラインで参加してもらって、一緒に楽しんでもらうっていうことができると、業界的にももっと盛り上がるんじゃないかなと思っています。
--オフラインならではの「強み」みたいなものとかってどんなものでしょうか?
挺屋氏:
例えば今回みたいなチームブースを作って参加していただくというか、もちろん警備上の難しさなんかもあったりするんですが、ミート&グリートみたいにコミュニケーション取れるような場所を作れることが大事かなと思います。ただ見てるだけじゃなくて、より積極的に参加するっていうことにもう少し何か仕掛けを作っていきたいですし、お客さんたちにもそういったところを期待して来て頂きたいですね。
e-elements DREAM MATCHについて
(編集・執筆/ena)