2024-04-26

【インタビュー】日本のマーケティングを全てこなす「CORSAIR(コルセア)」の神冬旗氏に直撃インタビュー!世界中のPCゲーマーから愛され続ける老舗のデバイスメーカーの裏側に迫る!

世界中のPCゲーマーから愛されているアメリカ発祥のデバイスメーカー「CORSAIR(コルセア)」。そんなPCゲーマーの強い味方であるデバイスメーカーの日本マーケティングを全て担っている神冬旗氏に直撃インタビュー。昨年アップデートで実装したラピッドトリガーへの反響や今後のデバイス開発について、さらには神氏のおすすめデバイス紹介など、盛りだくさんの内容になっているので、ぜひチェックしてみてほしい。

自己紹介

ーー本日はよろしくお願いします。まずは読者の方に自己紹介してもらっても良いですか。

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神冬旗氏(以下、神氏):「CORSAIR(コルセア)」で日本のマーケティングを担当している神冬旗です。CORSAIRに入る前はオーディオ関係のマーケティングをしていたのですが、在籍していた会社の日本法人が2020年になくなってしまいました。そのタイミングで丁度CORSAIRが日本のマーケティングを募集していたので、応募して今に至っています。台湾に同僚が多いんですけど、日本のマーケティングは僕しかいないので一人でやっています。

ーーありがとうございます!普段ゲームはなにをプレイされているのでしょうか。

神氏:率直にお伝えすると、ゲームは全くプレイしないんですよ(笑)僕の中でゲームというとPlayStation3で止まっているので、10年以上前にやったのが最後になりますね。小学生時代はスーパーファミコンで遊んでいたのですが、最後にプレイしたのは『ドラゴンボール』のゲームまで遡ります。

ーーそうなんですね(笑)少し驚きました。本日はよろしくお願いします!

神氏:よろしくお願いします!

CORSAIRのこだわりやおすすめデバイスを一挙にご紹介!

ーーFPSゲーマーから高い需要のあるラピッドトリガーを去年の11月に実装されたと思います。実際にアップデートした時の反響はどうでしたか。

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神氏:反響自体は良かったのですが、他のメーカーさんが出した後にアップデートを施したので「ちょっと遅いです」「なんでフルサイズで出したのですか」「テンキーレスは出さないんですか」など、ユーザーさんから指摘や意見の方が多かったです。ただ、キースイッチに磁気を使っているので、打感や打ち心地に対する評判は凄く良かったですね。

あとは、ラピッドトリガーは「VALORANT」や「Counter-Strike 2」などのストッピングエイムが必要なFPSで実感できることが多く、違いが分かりにくいという声もあります。CORSAIRを愛用しているユーザーさんは「Apex Legends」などをプレイしている方が多く、恩恵を受けにくい場合も往々にして生まれてしまいますからね。

しかし、現在ラピッドトリガー搭載のキーボードは「K70 MAX」しかないので、まだまだ伸びしろがあるのが現状だと思います。

ーー僕もテンキーレスはいつ発売だろうと思っていましたね。実際にユーザーさんの声を受けて開発に着手はしているのでしょうか。

神氏:ユーザーさんの意見をしっかりと受け止めて、急ピッチで開発をしている段階です。出来る限り早くみなさんの手元に届くように開発を進めているので、発売日の発表を待っていてください!

ーーひとりのファンとして楽しみに待っています!キーボードにメディアスイッチを取り付けた経緯やエピソードがあれば教えていただけますか。

神氏:メディアスイッチを取り付けた理由に関しては、特にこれといったものはありません。ただ、開発するにあたって製品を発売するまで、周りの競合他社のトレンドを見て盛り込んでいる感じです。

今でこそRGBのデバイスは当たり前だと思いますが、一番最初に始めたのがCORSAIRだったと思います。どの製品に限らず、自作PCのレビューを依頼すると、みなさん「CORSAIRのRGBの光り方が綺麗」という声をいただいています。ただ光らせるのでは無く、製品によってすごく光ったり、ファンも止まってるように光らせることができるところがルーツなのかなと思います。

ーーRGBの話を聞いていて、御社のデバイスは色鮮やかに光輝くものが多くあると思います。なぜRGBを始めたのかお聞きしてもよろしいですか。

神氏:率直にお伝えすると、本社から明確な答えが出て来ませんでした…。開発した時の社員がいれば分かりやすいと思うのですが、みんな入れ替わっちゃって答えが出てこなかったんですよね。

一つ考えられるのは、3年ほど前に「K70 RGB TKL CHAMPION SERIES」を出したのですが、トーナメントモードスイッチという機能を搭載しています。単色に光らせるモードで、プロ選手が試合に持っていく時は一色にして、集中力を分散しないようにできます。楽しみたい時は全開で光らせて、本当に集中したい時は単色にするといった使い分けができるので、RGBの発祥に繋がるのではないかと思います。

ーーそんな便利な機能も付いているんですね!おすすめの新商品とかはありますか。

神氏:現在は水槽型のピラーレスのケースが流行っていて、弊社からも2024年3月8日に発売しました。白色のマザーボードやグラフィックボードと組み合わせると、全部白色に統一することができ、透明感あるデザインが映えてすごく綺麗なんですよね。

あと、東京ゲームショウで展示していたもので「iCUE LINK Smart Component Technology」という、すごく簡単にパーツを接続できる技術を去年発表しました。自作PCを作る時、ケーブルを一個一個整理するのが大変だと思いますが、iCUE LINKを使うことで数珠繋ぎのように接続できるようになります。ケーブルマネジメントがしやすくて、時間もかなり短縮することができます。

iCUE LINKと先ほど説明したピラーレスケースを組み合わせると、簡単にめちゃくちゃ美しいPCを作ることができます。少し値段が張ってしまうのですが、ファンや簡易水の部分も簡単に接続でき、全自動でiCUE LINKが判断してくれるので楽々に管理を行えます。

ーーめちゃくちゃ便利な機能ですね!終売しているデバイスがあると思うのですが、今後復刻販売する予定はありますか。

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神氏:結論からお伝えすると、工場のラインごと閉めてしまっているので復刻販売はないです。ただ、当社の一番有名な「K65 RGB Rapidfire」というキーボードがあるのですが、日本でめちゃくちゃ売れたので日本だけのために去年まで生産ラインを残していました。X(旧Twitter)で「在庫限りになりました!」と呟いたら「買わなきゃ!」「えー!いやだ!」などの反応をすごく見受けられました。根強い人気のあるモデルに関しては、このような措置が取られることもあります。

発売は2016年の8月24日で他の国では終売になっていたのですが、日本の売り上げだけで生き残り続けて、生産が続いた事例です。日本人だからこそだと思うんですけれど、口コミが初期の火付け役になってくれたと思います。日本人は口コミをしっかり聞いて購入する傾向なので、いいものだと爆発的に長期間売れ続けるイメージがありますね。

ーーTGS2023で手で曲げられるディスプレイを展示していたと思いますが、曲げられる利点はどのような所になるのでしょうか?

神氏:LGとの共同開発で出来た製品で、世界初曲げられるということを売りにしていたので、利点というより世の中の注目を集める役割が強いですね。東京ゲームショウで実際に曲げている動画がバズって、300万再生ぐらいされました。

曲げられる利点としてはフラットの状態で45インチなので、曲げることで視点移動をある程度抑えられるのと、一番推しているのが没入感が高い部分です。有機ELだからこそ曲げられる、かつ黒と明るさのコントラスト比が映像体験の没入感を高めてくれるので、発売した時にゲーマーだけじゃなく、映画も楽しめる部分もPRしました。

CORSAIRの公式X(旧Twitter)では、三台繋げた状態でレーシングゲームをする動画が上がっているのですが、普段見えてる部分以外にも、後ろの景色や音まで作り込まれているのが分かる動画になっています。ここまでやる方は少ないと思いますが、こんなこともできるんだよと知っていただけると幸いです。

ーーどのような経緯で開発まで至ったのでしょうか。開発中に起こった問題や苦労したエピソードを交えながら教えていただけますか。

神氏:LGとのパートナーシップによる技術提携で実現した製品で、ある日突然「発売するよ!」と伝えられて、何にも知らされない状態で出てきました(笑)ただ、販売価格が最初すごく高かったんで、日本市場でどう反応されるのか心配していましたが、初期のロットは即日で完売しましたね。X(旧Twitter)でポストした時も、すごく反響を頂けたのを覚えています。

ーー突然だったんですね(笑)日本では白のデバイスに力を入れている印象を受けるのですが、海外も同様に力を入れているのでしょうか。

神氏:実は他のアジアの国に聞いても白はあまり売れないデータがあって、日本の方だけが白を好む傾向にあります。例えば、日本は白色の車が多く走っていますが、海外では黒が多いと思います。日本人ならではの文化的価値観や捉え方があって、白を選ぶユーザーがすごく多いと考えています。

通常は白のデバイスで動画を作ることはしないのですが、日本独自の動画を作ってもらって、東京ゲームショウで流していました。日本市場に対しては、熱意を持って取り組んでいる感じになりますね。

ーー様々なデバイスを手掛けている中で、神さんの一推しのデバイスはどれでしょか。

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神氏:僕のイチオシはヘッドセットです。キーボードやマウスは、どうしても好みがすごく強く出るデバイスだと考えています。例えば、CORSAIRがプロチームのスポンサーになっても、大会では使い慣れてるデバイスを使うと思うので、一概にこれが良いとは言えません。ただ、ヘッドセットはよほど頭が大きくない限り、ゲームや配信とかで使えると思います。Bluetoothも付いているので、ゲーム以外にも動画を見る時や外出する時にも使用できます。

あとは、単純に音がいいのも魅力ですね。サウンドIDで好みに合わせて聞こえ方を調整できる機能も付いてます。マイクのミュート機能も充実していて、ミーティングでマイクをミュートにするまでもない場面ではフリップアップも便利です。口元に合わせてマイクの位置調整もできますし、デフォルトでも音質が良いので、総合的に考えた時におすすめできるのはヘッドセットだと思います。デザインもお洒落でフラットな感じに仕上がっているので、どこでも使えるのもおすすめの理由です。

ーー個人的にキーボードがおすすめだと勝手に思っていたので、意外な答えにびっくりしています。

神氏:盲点だと思います(笑)CORSAIRを知っている方なら、キーボードという方が多いと思います。ヘッドセットは一回買うとなかなか買い換えないデバイスなので、迷っている方がいたらCORSAIRのヘッドセットを検討してみてほしいです。何種類か出しているので、お気に入りのデザインを見つけていただければと思います。クオリティやパフォーマンス、見た目も自信を持っておすすめします!

ーー今度試させていただきます!個人的な話になりますが、僕はチェアがおすすめです。

神氏:ありがとうございます!僕も部屋で使っていて、日本ですごく売れ行きがいいんですよ。触り心地がしっとりモチモチしていて、すごくバランスの取れたチェアに仕上がっています。少し値段は高いですけど、ずっと座るし長く使うものだからと選んでいただけるケースが多いですね。

あと、日本限定のブラウンも販売しています。以前発売したモデルが日本であまりにも売れたので、限定の新色を出しました。当社のセールスと代理店が、「ああでもない」「こうでもない」と議論しながら生まれたのがブラウンです。日本のためだけに作られているので、一度ご覧になっていただけたら嬉しいです。

ーー今度ヘッドセットと一緒に見てみますね!

気になる今後の新製品は?デバイス開発の裏側に迫る

ーー現在、幅広いデバイスを販売していると思いますが、今後取り扱うデバイスの種類を増やす予定はありますか。

神氏:CORSAIRとして今は、新たなカテゴリーに進出することは考えていないんですよ。なぜかと言うと、現状でもかなりのデバイスをCORSAIRと傘下のブランドで統一することができるんですね。

モニターやヘッドセット、チェアからライトに加え、日本では販売していないのですが、デスクまで揃ってます。自作PCを作る際にも、CPU、マザーボード、グラフィックボード以外は全て弊社ブランドで統一することが可能ですからね。配信ブランドの「Elgato」や、コントローラーブランドの「SCUF」など様々なブランドを既に取り扱っており、これ以上カテゴリを増やす必要がないことがCORSAIRの強みです。

ーー現在開発しているデバイスや、発売予定のデバイスを差し支えのない範囲で教えていただけますか。

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神氏:やはり、先ほどご紹介したテンキーレスのキーボードですかね。まさに今全精力を注いで開発中なので。それ以外ですと、「K65 PLUS ワイヤレス」という2月末に発売したキーボードの別バージョンですかね。こちらは、日本で数量限定で6月末ごろに発売する予定です。詳細は伏せさせて頂きますが、日本をイメージしたデザインとなっています。

ーー今後、さらに力を入れていきたいデバイスはどれでしょうか。

神氏:力を入れていきたいデバイスはキーボードです。PCパーツやチェアなどは安定した売り上げを出せるのですが、キーボードは競合会社が多いので、売れ行きに波が出ちゃいますからね。実は、CORSAIRって2024年で創業30周年を迎えるんですよ。弊社のブランドって、結構第一印象で値段が高くて手が出しにくいと思われがちなので、「値段を問わず良いものが沢山あるんだよ」と言うことをこの節目の機会に広めていければと思います。

ーー新製品を開発する際に、どのようなフローで開発から販売に至るのでしょうか。流れを教えていただけますか。

神氏:まずは市場のリサーチから始めます。過去の売り上げのデータやインフルエンサーからのフィードバック、もちろんユーザーレビュー、ユーザー調査、あとはβ版のテストなどで色々な観点からデータを収集、競合他社の分析をして開発するか決定しています。ただ、そうするとありきたりになってしまうので、CORSAIRらしさを捨てないためにゲームであったり、より良い環境でプレイできることを大事にしています。

先ほど話した「K70 RGB TKL CHAMPION SERIES」のトーナメントモードスイッチは、プロ選手からの声で生まれました。プロの声もそうですし、エンドユーザーの声、日本のユーザーのフィードバックを踏まえた上で動いています。「白の製品を作ってほしい!」と声があがったら、もちろん白色のデバイスの開発も検討します。そのようなプロセスで実際にプロダクトの明確なビジョンが出来上がった場合は、開発をキックオフして色々なテストを重ねて、発売に向けて動きます。そこにはもちろんその産業デザインチーム、エンジニアリング、マーケティング、あとはコンプライアンスオペレーションとか、色々なチームが一体化して、最終的に一つの製品が送られますよっていうのが、正式なお答えにはなります。

ーー新たに開発していきたいデバイスのジャンルはありますか。

神氏:会社がどう考えているのかは分かりませんが、個人的に開発してもらいたいジャンルはインナーイヤー型イヤホンです。現在、インナーイヤー型イヤホンの需要が増えていて、色々なユーザーさんから声をいただいているので、挑戦できるデバイスだと思っています。実際に思っている人全員がコメントを残すわけではないので、一定の需要があると考えています。

ーー今後の新デバイスも期待しています!

デバイス選びについて一言

ーー最後に記事を読んでくれた読者に向けて、一言コメントをいただいてもよろしいですか。

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神氏:この記事を読んでくれている方は、CORSAIRを使ったことのない方が大半だと思います。なので、まずは口コミを見て「これだったら自分に合いそう」というデバイスでCORSAIRを始めてみてほしいです。今回紹介したデバイスは、読者の方に合わない可能性もあるので、ご自身に合うデバイスをまず一つ、CORSAIR製品で見つけて試してみてほしいです!

ーーお忙しい中、ありがとうございました!

「CORSAIR」の概要

会社名:CORSAIR(コルセア) 設立:1994年 公式サイト:https://www.corsair.com/jp/ja 公式X:https://twitter.com/CORSAIR_JP

Copyright © 1996 - 2023 CORSAIR. All rights reserved.
© 2023 Valve Corporation, all rights reserved.

[取材協力:CORSAIR]

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