2024年2月16日(金)に株式会社ゲームクリエイターズギルドが主催する『Game Technology Summit Vol.2』が渋谷ヒカリエで開催された。本イベントはゲーム業界 x 他業種交流会となっており、普段のゲーム業界ではなかなか聞けない話や、講演会終わりに来場者と自由に話すことができる交流会も実施された。今までの固定観念をぶち壊してくれるイベントになっていたので、会場の様子を中心に皆さんにお届けしていこうと思う。
『Game Technology Summit Vol.2』とは?
『Game Technology Summit Vol.2』は、ゲームクリエイターズギルドが主催する、ゲーム業界の技術・ノウハウを軸に他分野産業とのコラボレーション機会を創出することを目的とした横断型ゲーム開発技術展&ネットワーキングイベントだ。様々な業界から多くの方々が参加しており、ゲーム業界以外の方とも話すチャンスもあるイベントで、講演後には交流会も実施された。
そんな『Game Technology Summit Vol.2』の会場の様子やトーク内容を皆さんにお届けしようと思う。
▲本イベントを主催している株式会社ゲームクリエイターズギルドの宮田大介氏がオープニングトークで登壇された。
今までにない発想で事業を進める経営者の方々が登壇!
本イベントのトークショーには、SunnyValleyの谷口直嗣氏、キャドセンターの清水宏優氏、スポンサーセッションにThinkingDataの土川真幸氏、BytePlusの五十嵐涼氏が登壇されて、各業界でのゲームとの共創実例と未来の可能性について熱く語ってくれたぞ。
ここでは話していただいた内容を皆さんに紹介していこうと思う。
SunnyValley株式会社 代表取締役の谷口直嗣氏
SunnyValley株式会社 代表取締役の谷口直嗣氏は「ゲームエンジンを通して色々な事をしてみた」というテーマのもと、トークセッションを盛り上げてくれた。昔、プログラムをデザイナーに渡した際に、想像以上の表現が提出されてきたのがきっかけで、プログラムを使って映像を作る面白さに気づいて、様々な取り組みに挑戦されている。
アートもプログラミングで作ってみたり、東映アニメーションとの取り組みで、「魔法使いプリキュア」のエンディングをゲームエンジンで作ったりもしたとのこと。「正解するカド」という作品では数式を使ってフラクタルの3次元形状の背景を生成するシステムも開発されたそうだ。
その経験を活かして2012年ごろからは、VRと医療を掛け合わせた取り組みにも挑戦されている。CTスキャン(放射線)の3Dモデルを作成しており、手術の前のシミュレーションができたり、手術前の患者さんの上に映してみて、骨の状況や体の中がどうなっているのかを伝えるために使われている。直感的にシミュレーションができるシステムになっており、先進的な医療を届けられる代物になっているようだ。
また、ゲームコンテンツを使って、発達障害の検査やトレーニングができるのではないかと模索している最中とのこと。ゲームのキャラクターと話すことによって、コミュニケーションスキルを上げることも期待できるのではないかと谷口氏。最終的にはゲームをプレイを通して、現実世界に近い検査ができるようにしたいと意気込まれていた。
株式会社キャドセンター マーケティング・事業開発の清水宏優氏
株式会社キャドセンター マーケティング・事業開発の清水宏優氏からは「3D都市データがゲームエンジンに与える影響とは?」のテーマでトークセッションが行われた。普段はマーケティング活動に注力されており、営業的な動きなどといったフロント業務にも取り組まれている。図面から前建ての建物のCGやイベント・プロモーションのデジタルコンテンツ、自治体関係、防災関係のCGも作成されており、幅広い事業に挑戦しているとのことだ。
キャドセンターが手がける3D都市データは、測量データや地図、航空写真をもとに地形や構造物などを高精度に再現している。建物のデータも高さ ± 50㎝ という精度で作り込まれており、景観や防災、GIS(地理情報システム)にも使用されている。フォトリアルCGも表現力を追求したものが使用されており、空撮映像の代替としても使用されるという圧倒的リアリティを誇る。
3D都市データは「シン・ウルトラマン」の一部シーンなどにも使われている驚きの技術だ。東京や大阪、横浜のデータも作成されており、今後様々な映像で使われることだろう。
社内には建築を学んだ社員が数多く在籍しているとのこと。ここまでリアルな建築物を作り上げるためには、様々な技術が集約されているのが分かる。普段本物だと思ってみている映像が、3D都市データの可能性が大いにあるというのを頭に入れておくのも面白いかもしれないぞ。
ThinkingData 営業責任者の土川真幸氏
ThinkingData 営業責任者の土川真幸氏は、スマートフォン市場についてトークセッションで詳しく説明してくれた。現在のゲーム業界は、マーケットがグローバル化してきており、海外のゲーム会社がどんどん日本にも進出してきている。日本のスマホゲームも、今一度グローバルマーケットで勝負しないといけない時代に来ているのかもしれないと話していた。また、コロナ禍で発生していたゲームの時間をコロナが収束したことをきっかけに、その時間が他業界と奪い合っているとも考えられている。
日本と中国のモバイルゲームには違いがあり、ガチャのシステムが違うものになっている。日本のガチャは運の要素が強い独特なマーケットになっており、不特定多数の誰かに対して有利な企画が少ないのが特徴とのこと。対して中国は当然ガチャも並んでいるのだが、個別でアイテムを販売しており、ゲームオーバーになった際にオファーを出して購入意欲を促進するモデルが採用されている。
ThinkingDataとゲームを作っているゲーム会社は、ユーザー一人一人に合ったオファーを出せるように準備しており、データに基づいたアイテムを提示できるようになっている。ゲームの状態を見ている会社さんは多いのだが、どういう理由で離脱しているのかまで探っている会社さんは少ない。
その課題に対して、ThinkingDataが所持している膨大なデータで価値あるアクションを届けることができる。弊社に分析したいデータを提供していただければ、分析に適したデータに変換する仕組みも取り入れており、より深いデータを確認できるサービスも展開しているとのことだ。ゲームが伸び悩んでいる会社さんの強い味方になってくれるサービスを提供してくれる。
また、ゲーム業界だけではなく、会社さんが持っているデータを最大化することもできるので、データで悩んでいる企業さんは相談してみるのもよいだろう。ゲーム以外の業界にも、積極的に挑戦したいという土川氏の言葉が印象に残るトークセッションだったぞ。
BytePlus Japan セールスマネージャーの五十嵐涼氏
BytePlus Japan セールスマネージャーの五十嵐涼氏は、ARのマーケティングという部分にフォーカスを当ててトークセッションを展開してくれた。BytePlusは、レコメンドシステムや広告分析ツール、音声・ビデオ技術などインテリジェンスソリューションを提供する会社だ。
今回のトークセッションでは、AR広告は高いコンバージョンを生めるコンテンツになっており、2Dの体験に比べて70%も人の頭に残るものになっているというデータが「AR Advertising: A Ploy or the Future of Digital Marketing? - PostIndustria」より発表されていると語ってくれた。さらに、Z世代に対してもリーチできる可能性を秘めており、SNS等で自分自身をクリエイティブに表現することに抵抗がない人が増加している傾向にある点も追い風と五十嵐氏は話す。
ARと言っても様々な種類があり、身体を認識してARエフェクトを動かすものなど、エッセンスとしてARを組み込むことで、よりよいプロモーションを打つことができる。現在ARを活用した広告やプロモーションは少ないので、今後まだまだ伸びる可能性を秘めていると話されていた。
AR自体は以前から登場していて認知されている方も多いと思うのだが、AR x マーケティングという掛け合わせは、取り入れている会社さんが少ないのが現状だ。先行メリットが非常に大きいタイミングとなっており、よりインパクトのある広告にARを取り入れることで面白いものができる。
また、ARだけではなく、AR x SNSを組み合わせることでバズを作って、Z世代にもアプローチするのを視野に入れるタイミングではないだろうか。
今後の開催にも期待大
▲ゲームクリエイターズギルドの名物スタッフのまこちん氏もMCとして登壇していた。
ここまで『Game Technology Summit Vol.2』の会場の様子を皆さんにお届けしてきた。
様々な業界の方の話を聞けるのはもちろん、常に向上心を持った方にとって有意義な時間になること間違いなしのイベントになっていた。今まで知らなかった世界や知識を取り込めるので、筆者はついつい仕事のことを忘れて話に夢中になっている場面も多くあった。
普段では聞けないような話を聞ける場なので、今後もぜひVol.3、Vol.4と継続して開催して欲しいと願いながら、この記事を締めたいと思う。
『Game Technology Summit Vol.2』の概要
[取材協力:株式会社ゲームクリエイターズギルド]
(編集・執筆/ゲーム山本)