Blizzard Entertainmentが手がける『Warcraft Rumble(ウォークラフト ランブル)』。本作の開発者のTom Chilton氏とViK Saraf氏にインタビューの機会をいただくことができた。そこで今回は、インタビュー内容をみなさんにお届けしていこうと思う。
今回インタビューを受けてくれたお二方
ヴィック・サラフ氏
ヴィック・サラフ氏は「ウォークラフト ランブル」の開発部門のヴァイスプレジデントとエグゼクティブプロデューサーを兼任する。開発グループのために本作の開発と運営、製品戦略を指揮。最初期のコンセプト段階/開発初期から制作の進行を指揮してきた。
トム・チルトン氏
トム・チルトン氏は「ウォークラフト ランブル」のゲームディレクターとして、本作のビジョンの一貫性を維持する役目を担う。ゲーム内機能やコンテンツをデザインして優先順位を決定し、プレイヤーが手にするゲームが、確立されたデザイン理念に即しており、Blizzardの品質基準を満たしていることを保障する責任を負う。
ソフトローンチにおける注目要素について
ーー今回のソフトローンチにあたり、最も注目してほしい点を教えていただけますか?
トム氏:前回より色々と洗練されており、追加された要素もあります。主な変更点は、キャンペーンモードにヒロイックという難易度を追加しました。今まではノーマルだけだったのですが、色々と洗練されていくにつれて、高難易度を追加することができました。一つ一つのステージを手動で調整したので、できるだけ難しくなるようにしてあります。高難易度の他には、レアリティのシステムを追加したので、各キャラクターにコモン・アンコモン・レア・エピック・レジェンダリーとどんどん強くなっていきますし、あとはソーシャル的にもオーチェストというシステムを採用しています。
ーーそのヒロイックという高難易度に関して、具体的にどのくらい難しいのかを差し支えない範囲で教えていただけますか?
トム氏:一つ言えることは、熟練のプレーヤーでも難しいと感じるだろうと思います。ヒロイックをデザインする時に意識したところは、単純にヒットポイントやダメージを増やして同じようなプレーの仕方でクリアできる難易度の設定ではなく、各マップを調整して最初からそのマップがどういう風な戦いになるかって開発陣が夢見ていたことが、全て現実になるようなことを入れていきました。
例えば最初にプレイしていく時は、難しすぎるギミックもヒロイックなら「もう慣れてきたよね」ってことで取り入れることはありました。内部のテストでは自分の攻略法を見つけるのに、10回、50回コンティニューしたりする人もいたのでかなり難しいと思います。しかしクリアした時の達成感はすごいと考えています。自分専用の戦略を見つけなければならない設計になっており、ネットで誰かがこうやってクリアしたよっていう情報を載せたり、動画を載せたりしても自分のレベルと違う、レアリティが違う、タレントが違うっていうことで、同じビルドを作れないことがありますよね。ネットで得た情報を自分なりに昇華して、自分のアイデアなり戦略なりに練っていって攻略していくので、最終的にヒロイックをクリアした時には、自分がちゃんとクリアしたんだっていう達成感がすごく大きいと思います。
ーーレアリティも追加したとおっしゃっていましたが、具体的にレアリティによる違いを教えていただけますか?
トム氏:先ほどお話ししましたように、コモン・アンコモン・レア・エピック・レジェンダリーの5つのレアリティがあります。アンコモンになると最初のタレットを追加できるようになり、レアで2つ目のタレット、レジェンダリーで3つ目のタレットが追加されます。そういう風にゲームプレイをより遊びやすくするキャラクターを強くするのと同時に、経験では積めないボーナスレベルというのを設定しており、そのボーナスレベルがレアリティごとに少しずつ大きくなっていくのでレアリティが上がっていくと、経験値で得たレベルとは別のボーナスレベルが増えていくことになります。
ーー本作は短くコンパクトに遊べるというコンセプトのゲームだと思うのですが、今回のアップデートでその点に関して何か変更された点がありましたら教えていただけますか?
トム氏:デザイン的にはプレイ時間が短くても、長くても楽しめるような仕組みにしています。長時間プレイしている方でも、数ヶ月かかるようなくらいのコンテンツを用意しています。それと同時に5分であれ、1時間であれ、プレイヤーが自分のライフスタイルにあった時間にプレイして、コツコツ進めていけるようなデザインにはしてあります。なので平日は1日5分、週末になったら時間があるからもうちょっと長く遊ぼうとか、今週はがっつりできるぞみたいな感じで、自分のスケジュールに合ったプレイができる感じに設定しています。
ーー本作は65体以上のキャラやミニが実装予定だと思うのですが、リリース時のキャラやミニの数ってどれくらいになるのでしょうか?
トム氏:βで2体追加したので、ローンチ時には67体います(笑)それ以外にも他のミニも実装を予定しており、全てのミニにタレントを3つ用意して色々コレクションできたり、自分のゲームプレイを変えたりできたりするので、充実したラインナップになってます。
気になる日本でのリリース時期について
ーー日本でのリリースを楽しみにしている方も多いと思うのですが、リリース時期はどれくらいになるのかを教えていただけますか?
ヴィック氏:可能な限り早くしたいと思っています。β期間が長かったのも意図的で、中枢にあるシステムや未来を見据えた様々な機能のテストなどをやっていたので、ちょっと時間がかかりましたが、その時間は有意義に使えたと思っています。8月9日にソフトローンチをフィリピンで開始しており、そちらの現場を見て他の地域でも順次開始していきたいと思っています。まずは世界的にローンチできるんだっていう、自信をチームにつけてから、世界に順次ローンチしていきたいと思います。
ーーフィリピンでソフトローンチを先に行った理由は何でしょうか?
ヴィック氏:これはテクニカルテストの面も兼ねているので、色々な繋がり方を考えてみると、フィリピンがとてもよかったんです。フィリピンはAndroidユーザーがとても多く、様々なスマホのデバイスタイプを通した情報を得られるのでフィリピンを選びました。
開発エピソードについて
ーーこれまでテストを行ってきたと思うのですが、気づきや反省点はありますか?
トム氏:やはりβ期間を通して得た知識で、洗練された部分もあります。例えば初期のレベルは、開発陣があまりにもゲームを知り尽くしてしまっており、初見の人にとっては難しすぎるチューニングになっていたので、ちょっと優しくしました。
また、特定のキャラクターがゲームプレイをスムーズにできるようなタレントを積んでいなかったりしたので、何度もデザインの試行錯誤を繰り返してよくしていくことで、ゲームプレイそのものを向上させていきました。
ーー本作には課金要素があると思うのですが、どのような部分に課金していく形になるのでしょうか?
ヴィック氏:主に使う通貨がゴールドになっており、キャラを購入したり、キャラをアップグレードしたりするのに、ゴールドをお金で買うことができます。ただプレイヤーからのフィードバックで、ミニチュアキャラクターのコレクションを突き詰めていきたい、コレクションはやりたいっていう声が多かったので、ゴールド以外に新たにアークエナジーというエネルギーシステムを追加しました。アークエナジーは、キャラクターのレアリティを上げるための通貨として追加しました。
しかし我々の一番のベースのアイデアは、全てを時間をかけて稼げるものにして、お金でしか買えるというような課金専用アイテムは絶対に作りません。
ーーゲーム全体の雰囲気がコミカルな感じなんですけれど、対象年齢がどれくらいになるのでしょうか?あと何歳ぐらいから楽しめるものになっているのか教えてください。
トム氏:具体的には年齢を設定していませんが、なるべく老若男女にアピールできるようにと思っています。ビジュアル的なインスピレーションは、ウォークラフトの世界の中で遊ばれるゲーム。例えば「ワールド・フォー・クラフト」のキャラクターが酒場に立ち寄ったところにあったピンボールの機械みたいな認識でデザインしています。「ワールド・クラフト」の中ではかっこいいキャラクターをミニゲーム的なチビ要素にしてこの世界観にマッチしさせつつ、ちょっと可愛くしていくとか。あと、スマホでもしっかり作動するように、あまりディテールにこだわらず、すっきりとしたビジュアルにしてスマホでも操作していても分かりやすいようにデザインしました。
そういう要素を全部合わせてみると、奥が深く戦略的で色々考えさせられる部分を持ちつつも、若い人からお年寄りまで、どんな年齢の人にもアピールできるようなビジュアルになりました。
ーー日本のモバイルゲームは、他のタイトルとコラボが盛んに行われるのですが、本作でも他タイトルとコラボしたりするのでしょうか?
トム氏:開発陣はコラボは楽しいと感じますし、Blizzardの他IPではコラボを開始しています。現在のランブルチームとしては、最初に「ウォー・クラフト」の世界にいるキャラクターや場所を全て出し尽くしてからコラボを考えたいと思っています。キャラクターや場所の数も多くて、記憶に残る敵の数も多いので、まずはそこから追求していきたいです。
ヴィック氏:「ウォー・クラフト」そのものが30年続くシリーズであり、「ワールド・ウォー・クラフト」もそろそろ10歳になるということで、現在のプレイヤーベースがあまりにも古いタイトルなので、ちょっと遠慮しちゃうよねって感じの人を取り込みたいし、日本は「ウォー・クラフト」をあまり知らない国なので、新しい「ウォー・クラフト」の体験を作ることによって、「そんなに怖くないよ」「すぐにアクセスできるよ」みたいな感じで、初心者にも優しい作りにしています。またこれを機に「ウォー・クラフト」の世界を知ってもらえるいい機会だと思っているので、日本を含め新しいファンを取り込めるのではないかとも思っています。
そして、ローンチ後に日本のプレイヤーのみなさんのフィードバックを聞いて、ファンのみなさんがどういう人なのかというのも同時に学んでいきたいと思います。
ーーゲームの中で「ウォー・クラフト」であったり「ワールド・ウォー・クラフト」の原作のストーリーを確認できたり追体験できるようなシステムはあったりするんでしょうか。
トム氏:ランブルのストーリーにおいては、追体験できるというのはなくて、世界観に浸るって言った方が正しいと思います。ランブルを遊ぶことで、「ウォー・クラフト」の世界観について色々学べることはありますが、主なストーリーではそれほどではないかもしれません。世界の一部を体験して、キャラクターと一緒に戦ったり、敵として戦ったりして様々なキャラクターのことを知ることがメインとなります。
例えば、ミッションを始める前にボスの詳細を見ると、キャラクター性についてちょっとした一言が書かれているので、それを通じてキャラクターたちのことを知ってもらう、世界のことを知ってもらえると思います。なので、ストーリーはそんなにリンクしていないと思いますが、かなり情報量は多いと思います。
開発陣の好きなキャラ
ーー本作はソフトローンチでアップデートを重ねていると思いますが、お二人の好きなキャラクターとか、おすすめパーティーとかを教えていただいてもよいでしょうか。
トム氏:毎月のように好きなキャラクターが変わりますが、今は「Bloodmage Thalnos(ブラッドメイジ・サルノス)」が好きです。このキャラはプレイ中に呪文を唱えるとレベルが上がっていきます。なので、魔法キャラで固めたいよねって思うんですけど魔法だけでは苦しいので、魔法を唱える回数を多くしつつ、彼が死なないように、他の軍隊も入れおく戦略的な要素があるのでかなり楽しいです。死ぬと今までの努力がパァになるので、ちゃんと無駄にしないような戦略的な要素も楽しいです。
ヴィック氏:やはり毎月のように変わっていくので、対人戦をやった時に自分の推しキャラに「今回はボーナスつかないから出せないよな」みたいな葛藤をしますが、「Cairne Bloodhoof(ケーアン・ブラッドフーフ)」をよく使います。あとなぜか知らないけども、ほぼ毎回ドラゴンの卵が入ってくるんですよね…。あと、一番好きな呪文は「処刑」です。
今後の展望について
ーーeスポーツ的な展開というのは予定されているでしょうか?またゲーム開発時のバランス調整であったりとか、色々なモードを追加するにあたって、eスポーツを意識されたことはあるのでしょうか。
トム氏:eスポーツは、脳裏にはチラっとありますが、それはプレイヤーがゲームにどう反応してくれるかにもよると思います。特にPvPのシステムにはかなり力を入れたので、みなさんがどう遊んでくれるかと考えるとワクワクしています。最近βで新しく追加して、うまくいってるなと思ってるシステムは、メタゲームを腐らせないというか、同じに場所にずっと停滞させたくない思いがあります。とあるシーズンでは、色々なマップがあるけど、一つだけフィーチャーされるマップっていうのがあって、シーズン中何回かマップの特徴が変わっていきます。
例えば、普通の見張り塔だった塔がいきなりドラゴンが住む塔になったり、いきなりロケットを飛ばしてくる塔になったりとか変わっていきます。それによって、強いユニットや弱いユニットとかも変わってきます。マップ自体にも色々な変更要素を入れたりして、通常マップだったり、リーダーを置いた時にレベルが自動的に上がるマップだったり、一番最初に攻撃した時に攻撃力が増したり、全体的にゴールドが溜まりやすくなってゲーム展開が早くなったりとか。様々な要素を組み合わせていくので、組み合わせ方がとてもたくさんあるので、メタがずっと同じというわけではなくなると思います。
現在では2週間に1回、ちょっとメタゲーム変わったよねっていうのを体感的に感じるので、常にキャラを強化したり、ナーフしたりしなきゃならないっていうストレスから開発陣がちょっと解放されたと思っていますし、同時に常にキャラクターに調整を入れないことによって、プレイヤーのイライラも少しは収まると思っています。
最後に日本のみなさんへのメッセージ!
ーーここまでご質問にお答えいただきありがとうございます!最後に日本のみなさんにメッセージをいただけますでしょうか!
トム氏: まずは記事や動画での告知や、ニュースなどを読んだり見たりしている皆様、ありがとうございます。 私たちが今開発しているゲームは、とても多くの人たちが楽しんで好きになってくれるようなゲームであり、とても魅力的かつ難しいやりがいのあるゲームだと思っているので、日本の皆様もとても好きになってくれると思います。我々に機会を与えてくれる全てのプレイヤーにありがとうと言いたいのと、ゲームを手にした時に楽しんでいただけると幸いです!
ヴィック氏:本当に読んでくれたり、見てくれたりしていただき、ありがとうございます。世界中の皆様にこのゲームを届ける長い長い旅がようやく終わり、新しい始まりが幕を開けようとしています。日本を含め、もうすぐ世界中の皆様にゲームを届けることができますので、記事やニュースをずっと追ってきている皆様、ありがとうございます!できるだけ早く皆様のお手元にゲームを届けたいと思っています!
今後の動きにも期待大!
今回は『Warcraft Rumble(ウォークラフト ランブル)』の開発者へのインタビューを紹介してきた。
インタビューを通して、本作は製作陣の愛を一身に受けていると感じることができ、早くリリースして欲しいという気持ちが高まった。お二方のお話を聞いていると、ゲームを大切に育てている印象を強く受けたので、成長した『Warcraft Rumble』のリリースがより楽しみになった。
筆者は早くプレイしたいので日々情報収集していくぞ。みなさんもぜひ今後の動向を追ってみて欲しい。
『Warcraft Rumble(ウォークラフト ランブル)』の概要
(編集・執筆/ゲーム山本)