パナソニック株式会社が手がける「ゲーミングネックスピーカーシステム SC-GNW10」。ヘッドホンやイヤホンとは違い、不思議な感覚を味わえるデバイスに仕上がっており、プレイヤーを次世代のゲーム体験に導いてくれる商品になっていた。この記事では実際にゲームエイトライターが体験してみた感想や、開発者インタビューを記載しているので、ぜひチェックしてみてほしい。
「ゲーミングネックスピーカーシステム SC-GNW10」とは?
みなさんは「ゲーミングネックスピーカー」というデバイスをご存知だろうか。何を隠そうあのパナソニックが手がけるゲーミングデバイスの一つで、2023年11月17日(金)に販売が開始された商品だ。通常のヘッドセットやイヤホンでは、体験できない不思議な感覚を味わえる仕上がりになっており、ゲームはもちろん普段使いもできる万能デバイスになっている。
この記事ではゲームエイトライターが実際に装着した感想や、開発者インタビューをみなさんにお届けするので、ぜひ最後までチェックしてみてほしい。
ゲームエイトライターが体験してみた!
早速パナソニックさんの計らいで「ゲーミングネックスピーカーシステム SC-GNW10」を実際に装着してみた。一見重そうに見えるのだが、首にかけてみるとほとんど気にならない。長時間ゲームプレイしても疲れなさそうな重さに仕上がっている。筆者は普段イヤホンでゲームをプレイしているのだが、イヤホンより楽かもしれないと感じさせてくるほど、ほどよい装着感に驚きを隠せなかった。
このゲーミングネックスピーカーにはマイクも搭載されているので、ゲーム中やリモート会議中にボイスチャットを利用することが可能だ。そこで気になるのは、環境音をどのくらい拾ってしまうのかという部分だろう。爆音で音楽を聴きながら、外で工事をしている時にどのくらい音を拾ってしまうのか。この機能が充実していないと、相手にストレスをかけてしまう。
そんな気になるノイズキャンセリング機能に関して、担当者の方から「ほぼ環境音は拾わない」という言葉を聞くことができた。ほぼ環境音を拾わない…?詳しく聞いてみると、トイレをしながらでも環境音を拾わないというのだ!これだけでも購入を検討してみてもよいのではないだろうか。
ほぼ環境音を拾わないということは、仕事での会議でも使用できてしまう。昨今のリモートワークで家にいる方が多くなったと思うので、快適に仕事に集中するためのアイテムとして選択肢に入れてみるのも良いだろう。
そして、実際にゲーム音声を流してもらって体験した率直な感想は「音質がめちゃくちゃいい!」だ。先ほども普段イヤホンでゲームをプレイしていると言ったのだが、普段では聞こえないような音を拾ってくれたり、はっきりとどの場所から音が鳴っているかまで分かってしまうのだ。これ…ヘッドホンやイヤホンじゃなくてネックスピーカーで良いのでは?と思ってしまうほどの完成度。
音質のモードも細かく設定できるようになっており、RPGモードやFPSモード、ボイス強調モードなど、プレイするゲームによってお手軽に変更することも可能。さらにPCアプリ「SOUNDSLAYER Engine」を使用することで、自分の好きなようにカスタムもできてしまうのだ。分かりやすいUIが特徴的で、直感的に音の調整をできてしまう優れものだ。独自音設定を最大3つまで登録することもできるので、音にこだわるゲーマーも満足すること間違いなしの機能を搭載しているぞ。
環境音でゲーム音が聞こえづらいのではないか?という不安を持っている方も多いと思うのだが、ボリュームを調整することで全くと言っていいほど周りの音を遮断することも可能だ。ヘッドホンやイヤホンとは全く違う、新しい体験に驚くこと間違いなしだろう。
ここで「ゲーミングネックスピーカーシステム SC-GNW10」の開発者にインタビューできたので、熱い想いをみなさんにお届けしていくぞ!
開発者インタビュー
自己紹介
▲今回の取材に協力していただいた後藤一孝氏(左)とサンガッカーラ・ウデーニ氏(右)
サンガッカーラ・ウデーニ氏(以下、ウデーニ氏): パナソニックエンターテイメント&コミュニケーション株式会社ビジュアル・サウンドビジネスユニット技術センターのハード設計部という部署に所属しているサンガッカーラ・ウデーニと申します。
2009年10月に入社をしまして、主にオーディオ商品やサウンドバーの設計を担当してきました。2018年からゲーミング向けの商品の設計をしています。今回ご紹介する「SC-GNW10」にも開発リーダーとして携わらせていただいています。
後藤一孝氏(以下、後藤氏):機構設計担当をしている後藤一孝と申します。機構や構造、外装といった構造物をどう組み立てるか、外観をどう仕上げるかを考えています。
ゲーム系の商品を手がけ始めたのはここ数年で、入社してから小型の防水テレビや小型のスピーカー付きディスプレイのような小型商品の音響を構造設計してきました。小さい商品で大音量を出すためには特有の難しさがあるので、ゲーミングネックスピーカーにも機構の責任者で開発に携わらせていただきました。
余談ですがウデーニとは同期入社でして、意見のやり取りがしやすい環境で開発できましたね(笑)
ゲーミングネックスピーカーという初の領域に踏み入れた経緯
ーー数多のヘッドホンやイヤホンが販売されている中で、なぜゲーミングネックスピーカーを開発しようと思ったのでしょうか。
ウデーニ氏:2018年頃まではオーディオ商品を設計していたのですが、年が経過するにつれて市場がだんだん縮小していたので、持っている技術を応用できる商品を作ろうという声が上がったのが始まりです。そう考えた時にゲーム市場は成長が早いし、ゲーム業界のブランドを持っていなかった時期なので、ゲームという新しい市場を開拓したい思いで開発を進めましたね。
現在はヘッドセットがメインになっており、大手メーカーさんもかなりの種類を出されているので、いきなりヘッドセットを出すのではなく、普段では味わえない体験をしてもらいたいと思いヘッドセットとスピーカーの間を取って、ゲーミングネックスピーカーを提案しました。ネックスピーカーという新しい体験の選択肢があると認知してもらうことで、ゲーマーにも広がっていくと思っています。
こだわりが詰まっているコンパクトボディ
ーー開発秘話や苦労したエピソードをお聞きしてもよろしいでしょうか。
ウデーニ氏:ネックスピーカーの開発は初めての取り組みで、開発初期はボディの中にスピーカーや回路、電子機器を全て埋め込めると思っていませんでした(笑)回路設計の見直しや使う部品の選定、設計を何回も何回も試行錯誤して構成を決める工程が一番難しかったです。
以前開発したモデルは有線だったのですが、今回の「SC-GNW10」は無線になるので、バッテリーを配置するスペースを確保する必要もありました。バッテリーを大きくすると重くなりますし、信号を出す部品と近すぎると電波の質が乱れてしまう問題も出ていました。
後藤氏:私が開発していて苦労した部分は装着感になります。人によって体格が全く違うので、4つのスピーカーから違う音が出てきて、前後左右を認識できるように設計するのが難しかったです。内部の部品の突起量や設置する位置によって、聞こえ方が全く違ってくるので、何回も調整して今の形状になっています。
首の部分の設計も難しくて、他のネックスピーカーと違って広げた時にもとに戻ろうとする力をあえて少なくしています。長時間、映画鑑賞やゲームプレイをしても、一番気持ちいいポジション、疲れにくいポジションを探してもらえるように設計しています。また、位置を調整するとステレオ感も変わってくるので、自身の気持ちいい音、体験に合わせて調整いただけます。
首の部品も柔らかさや形状の違うものを20種類ぐらい作って、アンケートを聞いて回ったりしました。データでは分からない部分も大きいので、社内のゲーマーにも協力してもらって現在の形になりましたね。
ーーこだわりをヒシヒシと感じられます!首の部分の素材には何を使用しているのでしょうか。
後藤氏:「エラストマー」というゴム系の樹脂を使っています。「エラストマー」の中に柔らかさや手触りが違う種類があり、付け心地や長時間の使用で痛みが出ないものを選んでいます。この素材も社内で実際に体験してもらって、一番しっくりきたもので作らせていただきました。
ーーネックスピーカーでマイクも搭載されているとのとこなのですが、音声をマイクが拾わないようにするのにも苦労しそうなものですが。
ウデーニ氏:スピーカーの近くにマイクを2つ配置しているので、スピーカーから大音量で流しても音を完全に消すためにエコーキャンセリング、環境音を消すノイズキャンセリングの調整も非常に苦労しました。マイクとスピーカーの距離が数センチもないので、効率的に音をマイクに届くようにするのが最後まで苦労しました。ギリギリまで部品を削る作業の繰り返しでしたね(笑)
後藤氏:ここまで距離が近いと、スピーカーの振動が内部を伝達してマイクに直接入るケースもあるので、苦労したポイントの一つです。爆音で音楽を聞きながら会話していても相手には届かないのでゲームチャットはもちろん、オンライン会議のスピーカーとしても安心してお使いいただけると思います。
ウデーニ氏:周囲に声があった場合その声を拾う場合がありますが、環境音に関してはほぼ100%シャットアウトしてくれます。AIノイズキャンセリングも搭載しているので、トイレや料理していても環境音を拾わないですね(笑)
ーーノイズキャンセルのお話を聞いていて、ゲーマー向けの音の調整も苦労しそうと感じました。
ウデーニ氏:テレビや映画見るお客さん向けにオーディオを作ってきたので、音の調整は苦労しました。とあるゲーム会社さんに開発した商品を持っていたのですが、何回も何回も指導してもらって調整しました。
特にネックスピーカーは前後だけではなく、方向をはっきり表現しないといけないし、サラウンドの空間を作らないといけなかったので、前後のスピーカーから出す周波数も細かい調整を重ねました。
社内にゲーマーもいたのですが、ネックスピーカーの知見はほとんどなかったので、形に落とし込む作業は難しかったです。
後藤氏:ピュアオーディオを聞く方とゲームをする方では、求める方向性が違うので苦労しましたね。とにかくゲーマーのことを考える部分に注力して、ゲーム会社さんに協力していただいたのはもちろんですけど、社内で部署関係なくゲーマーの社員に意見を求めていました。開発者はどうしても自分に甘くなるかもしれないので(笑)
ウデーニ氏:忖度なしのコメントをしてもらいましたね(笑)スピーカーも何回も変更して、最終的にスピーカーの中に入っているマグネットを調整して、ボイスコイルの震度の動きを良くして対応しました。
後藤氏:どんどんスピーカーを良くするので、機構面もかなり苦労しました(笑) スピーカー部が重くなった時は、他の箇所で軽量化できる部分がないかを血眼になって探し、商品全体の重量が重くならないよう拘りました。実際に使用してもらった方も「重さはあんまり感じなかった」と言ってくれる方が多かったので、妥協せずに作り込んで良かったと思います。
ウデーニ氏:音をイメージしている商品なので、スピーカーは妥協できないところでしたね。重さに対してもTGS2023で色々な方に体験いただいて、重さに関してネガティブな声がなかったのでよかったです。
おすすめの使い方や活躍できるシーン
ーーお二方の思う魅力的な使い方を教えてもらえますか。
ウデーニ氏:家族がいる中でイヤホンで音楽聞いていたら、子供の声とか喋りかけてもらっても反応できないと思うんです。私自身も妻に怒られることもあったのですが、ネックスピーカーを使用することで好きな音を流しながら掃除をしたり、ゲームする時も周りの音が聞こえるので、楽しみながらコミニュケーションも同時に取れるのが良いですね。
一番魅力に感じるのは、固定のスピーカーだったら離れると音の質が下がりますが、ネックスピーカーだと移動しても質が落ちないのが魅力的なポイントだと思っています。
後藤氏:私はデザイナーさんや企画で話し合って、所有欲を満たしてくれる商品になったことですかね。形状はもちろんですけど、LEDの光り方も色々なパターンを試して、良いものを買ったぞって思ってもらえるように頑張ったので。
色々な案があったのですが、さりげない格好良さやパッケージの色でもパナソニックのブランドを認知していただきたいと思いますし、商品を見て「よし!ゲームするぞ!」となっていただければと思います。所有欲を毀損しない点もポイントなので、良いものを買ったと思って使っていただけたら嬉しいです。
ーー何かをしながら使えるというお話が出ていると思うのですが、どのくらい離れても大丈夫なのでしょうか。
ウデーニ氏:紹介している範囲は10メートルですが、家の中だったら隅から隅まで届くと思います。検証した環境では1階から2階まで届いていたので、電子レンジ、周囲に2.4GHzの電波がどのぐらいあるか、金属とかの環境によって通信が途切れたり、繋がりにくい場合も出てくるかもしれませんが、基本的に家のなかなら大丈夫だと思います。
ーー本製品は無線なので遅延が気になるのですが、リズムゲームでも使用できますか?
ウデーニ氏:ゲーム会社さんのゲーミングサウンドディレクターさんにも体験いただいたのですが、ハイスピードアクションゲームをプレイしても全く遅延を感じないとおっしゃっていたので、音ゲーでも全く感じないと思います。一般的に有線だったら早い、無線だったら遅いという考え方があると思いますが、最近のデバイスはそうとも限らないクオリティになっています。
例えばパソコンに繋げたとしても、スペックによって最大限のパフォーマンスを出せるかというとそうとも限りません。USBから入力された信号をどのぐらいのスピードで処理するか、音質処理の時間によって変わってくるので、いくら有線でも遅延しないとは言えない。
今回に関してはUSBも通信が早いものを採用しており、送信機とネックスピーカーの無線デバイス間の通信は20msec以下で行っています。ここまでくると人間の耳では非常に分かりにくいので、音の遅延が感じないと思います。
後藤氏:機構面で言いますと、アンテナの配置ですかね。妨害を受けにくい、一番表面の飛びやすい部分に設置させてもらいました。他の部品の位置を調整しながら、電波に干渉しない位置に配置するのに苦労しましたね。
今後の商品開発の展望
ーー今後もゲーミングネックスピーカーを出す予定や、新しいデザインのゲーミングデバイスを作る予定はありますか。
ウデーニ氏:ネックスピーカーは、色々と検討していきたいと思っています。その他の商品に関しても、今のところはまだ言えるような段階ではないんですけど、もちろん出していきたいと考えています。
後藤氏:我々は幅広い商品を作っているチームなので、パナソニックにしかできないゲーム体験を生み出せたらと思っています。
ゲーマーと言っても、ライトゲーマーからプロゲーマーまですごく幅が広くて、使っているデバイスや意見も全然違ってくるので(笑)PCゲーマーに刺さるような、そういったコンセプトを明確にしながら、開発していけたらとは思います。
ウデーニ氏:今まで聞こえてなかったような音があったり、どこから音が鳴っているという部分まで作り込んでいるので、今後もとにかく音を良くしたり、使いやすくすることをテーマに開発していきたいです。
読者の方々に向けて
ーー最後に記事を読んでいただいた読者の方々に一言お願いします。
ウデーニ氏:実際にネックスピーカーを体験していただいたら、見た目の印象が全部崩れてしまう商品だと思うので、ぜひ一度体験してみてください!実際に店舗で体験してもらって、良い買い物になると思います!
後藤氏:付けた時の心地よさというのをこだわって作っていますので、一度どこかで肩にかけてみてください!私も家で使っていますけど、OT型スピーカーやヘッドホンでは絶対味わえない別次元の臨場感があるので、ぜひ体感いただければと思います!
ーーお忙しい中お話しいただき、ありがとうございました!
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[取材協力]パナソニック株式会社
(編集・執筆/ゲーム山本)