ブリザード・エンターテイメントが運営を行うチーム制アクションFPS『Overwach2』では、2024年10月18日より『僕のヒーローアカデミア』とのコラボイベントが開催中だ。そんなヒロアカコラボに関して、アート・ディレクターのDion Rogers氏に直接質問をさせていただける機会を得ることができた。今回のコラボの製作秘話や、コラボスキンに関するアレコレをお聞きする事が出来たので、ぜひチェックしてみて欲しい。
プロフィール
Dion Rogers(ディオン・ロジャース)
ブリザード・エンターテインメントに所属するアート・ディレクター。国際的なアーティストチームと協力し、『オーバーウォッチ』と『オーバーウォッチ2』のビジュアル開発と世界観の構築に貢献している。ブリザードのゲーム開発者として15年以上、Heroes of the Stormや、World of Warcraftを含む様々なタイトルに携わる。
ニュージャージー州生まれで、人生の大半をノースカロライナ州で過ごし、美術史とゲーム開発について学ぶ。近未来の世界やファンタジックな環境を表現した、明るく鮮やかなアートワークを作るのが好き。ミニチュアウォーゲームの愛好家でもある。
OW2×ヒロアカコラボ決定の経緯や理由について
──『僕のヒーローアカデミア』とコラボするに至った経緯や理由をお伺いしたいです。
Dion Rogers氏(以下、ロジャース氏):まず、僕のヒーローアカデミア(以下、ヒロアカ)とOverwatch2の両方に「ヒーロー」という共通のテーマが存在する事から、世界観としてもマッチしているというのが大きな理由です。『ヒーローになりたい人』と『誰でもヒーローになれる』というテーマが共通していたのも、コラボ採用の決め手となりました。
オーバーウォッチの開発陣の中にもヒロアカのファンが多く居て、アーティストやデザイナーも「このコラボはやりたい!」とずっと言っていたので、実現できて本当に嬉しいです。
──以前にも『ワンパンマン』や『カウボーイビバップ』といった日本のアニメ作品とコラボをされていますが、選ばれている理由や経緯などをお聞かせください。
ロジャース氏:これは開発チームの中で色々なタイトルやアニメをまとめたリストがありまして。そこには、彼らが子供の頃から慣れ親しんできた作品や、最近見て好きだった作品などから、オーバーウォッチの世界観とマッチするんじゃないかって作品やアニメがまとめられてるんですよ。
その中から、アーティスト側から「こんなのはどうですか?」って逆にプレゼンしてきたりして(笑)。勿論その中には、今回コラボを行うヒロアカも入ってました。
ヒロアカというアニメの世界観から伝わってくるポジティブさに開発陣も鼓舞されていますし、オーバーウォッチの世界でもポジティブさをウリにしているので、良い感じにコラボが出来るんじゃないかと考えました。そして、長年親しまれてきた作品とのコラボが実現して、非常に光栄に思っています。
コラボスキンに関するアレコレ!開発途中で泣く泣く断念した事も沢山あって…?
──今回コラボスキンの対象となったキャラ以外にも、候補に上がったキャラは居たのでしょうか。
ロジャース氏:やはりヒロアカの場合はキャラクターが多いと言いますか、とてもカッコよくて楽しいデザインのヒーローが多かったので、絞り込むことが大変でした。個人的には鳥頭の『常闇踏陰』が好きだったんですが「もっとメインキャストの中から選ぼう」という雰囲気だったので、泣く泣く見送ることになりました(笑)。
それ以外にも、技術的に無理だったものもありまして。それがオールマイトのトゥルーフォームです。本当に登場させたかったんですけど、どうしても難しかったので、いつものマッスルフォームだけになりました。
やっぱりそういうビフォーアフターと言いますか、オーバーウォッチ内でもヒーローになる過程を見せられるように、二面性を持つキャラクターを登場させたかったのですが、技術的に無理ということで断念せざるを得ませんでした。
後は「オールマイト以外にも教師陣のキャラを入れようよ」と話し合いを続けていたんですけど、デザイン的にオーバーウォッチに落とし込むというのがどうしても難しくて、こちらも断念しました。
──今回選ばれた5人のコラボスキンについて、こだわりのポイントがあれば教えてください。
ロジャース氏:まずはコラボスキン全体として、オーバーウォッチの世界観にどうマッチするか、そしてプレイヤーとして使ってもあまり違和感が無いようにキャラのシルエットを重視しています。
デク×トレーサーについて
ロジャース氏:まずはデクとトレーサーから。デクとトレーサーは性格的にも生い立ち的にもどことなく似ているといいますか。トレーサーも自分の個性がずっと弱点だと思っていたところをウィンストンに出会って、それが長所なんだと気づいたというのが、ヒロアカでのデクとオールマイトに通ずるところだと思っています。
そして「最初は自分なんて…」という感じだったところからどんどん成長していくという点も共通していて、やっぱり似ているよねってことで、良い感じにマッチする組み合わせだと思い、決定しました。
オールマイト×ラインハルトについて
ロジャース氏:ラインハルトにオールマイトを選んだ理由は、最初に申し上げたシルエットの部分が一番にあります。ゲームプレイ中でも把握をしやすいように、大きめのキャラクターには同様に大きめのキャラクターを当てようということで、ラインハルトにはオールマイトが良いんじゃないかという事になりました。
更に、みんなの為を思って隙あらば助けようとする性格や声の大きさなんかもマッチしているんじゃないか、ということで決定しました。
お茶子×ジュノについて
ロジャース氏:このコラボが決まった時には、まだジュノは開発中のキャラクターだったのですが、性格やシルエット的にもお茶子と非常にマッチしていたので、最新のキャラクターながらもこのコラボに加えようと話し合いを重ね、無事決定しました。
トガヒミコ×キリコ、死柄木弔×リーパーについて
ロジャース氏:残りの2人については、ヒーローばっかりじゃなくてヴィランも参戦させないと駄目だよねということで、リーパーとキリコをヴィラン役としました。
特にキリコは普通は凄い面白くて良い子だったので、逆にヴィラン役にしたら面白いんじゃないかってことで、採用しました。
──今回のコラボスキンの開発で苦労したことをお聞きしてもよろしいでしょうか。
ロジャース氏:全てのヒーローにおいて、正しくコラボ先のエッセンスを取り入れつつ、オーバーウォッチらしさを保つというのが非常に難しかったです。
また、これは他のコラボにも通ずる話なんですけど、オーバーウォッチのヒーロー達がその作品のコスプレをしているという設定にしているので、例えばトレーサーもヒロアカのことを良く知っていて「デクのコスをやるんだよ、私は!」みたいな感じになってます。
それと同時に、コラボ先の雰囲気だったり素晴らしさだったりを凝縮したものを、オーバーウォッチ内で楽しんでもらいたいと思っているので、そのコラボ先とオーバーウォッチのバランスを取るのにいつも苦労しています。
特に毎回難しいと思ってるのが、髪型です。何故かというと、髪型を変え過ぎてしまうとシルエット自体が変わってしまって、キャラの雰囲気にも関わってくるんですよね。ビジュアルのエフェクトなんかも変えすぎると新キャラみたいになってしまいますし、その辺の匙加減もかなり難しいです。
──ボイスラインやエフェクトなど、見た目以外にも変化するような仕様は用意されていますでしょうか。
ロジャース氏:全員分は用意していませんが、何人かはサプライズを用意しています。ヒロアカらしさを出すために、プレイオブザゲームの時のちょっとした何かだったりするので、その辺もぜひ注意深く見ていただければと思います。
──コラボを行うにあたって、版権元の集英社ともやり取りはされたのでしょうか。
ロジャース氏:編集部とも、何度も意見交換していました。多分一番連絡を取り合っていたのは、ラインハルト×オールマイトの顔ですね(笑)。ラインハルトは70歳のおじいちゃんなので、オールマイトの顔がいきなり出るとかなり違和感があるとなったので、綿密な打ち合わせを重ねていました。
もう一つは、デク×トレーサーの髪型ですね。デクっぽさを3Dで表現しつつ、トレーサーだと分かるようにするというのが凄く難しくて、ここでもかなり打ち合わせを行いました。でも全体的に、やっぱり版権元の方々と作業をするのは凄く楽しかったです。
ファンの方に向けてのメッセージ
──最後に、ヒロアカコラボを心待ちにするファンの方々に向けてメッセージをお願いします。
ロジャース氏:本日はこのような機会を設けていただき、ありがとうございます。アニメを始めとするアート的なデザインは私たちにとっても励みになっています。
そして、自分の大好きな世界観のキャラクターが自分たちが作った世界の中で動き回って色んなことをしている、っていうのを見るのも凄く楽しいですし、光栄なことだと思っています。我々開発陣としても、コラボは毎回楽しみながら作っているので、ユーザーの皆さんも一緒にコラボを楽しんでいただければと思います。
そして読者の皆様、今回のインタビューに興味を示していただき、誠にありがとうございます。開発チームのみんなもヒロアカが大好きなので、ぜひコラボスキンを通してヒロアカの世界間をオーバーウォッチ内で体験して、楽しんでください。
「Overwatch 2 × 僕のヒーローアカデミアコラボ」の概要
©2024 Blizzard Entertainment, Inc.
[取材協力]:Activision Blizzard
(編集・執筆/ふうた)