スレッドをご利用の際は、下記の禁止事項をよくお読みの上ご利用ください。
禁止事項に違反する書き込みを見つけた際には、投稿の削除や利用制限等の対処を行います。
詳細はGame8掲示板利用規約をご確認ください。
また、違反していると思われる投稿を見つけた場合には「通報」ボタンよりご報告ください。みなさまが気持ちよくご利用いただけますよう、ご協力をお願いいたします。
「どうして僕を残したままどっか行っちゃったんだよ」 不意に涙があふれ、のび太は嗚咽した。 「いきなりいなくなっちゃうなんてひどいよぉぉぉぉ!!!」 拳を机に叩きつける。 携帯が鳴った。 スネ夫から着信のようだ。 のび太は懸命に鼻をすすって通話ボタンを押した。
「おうのび太。お前ミクシーって知ってるか?」 電話の向こうはザワザワしている。 ファミレスかどこかから掛けてきているのだろうか。 「mixiってSNSの?一応知ってるけど」 「SNSだか何だか知らねえけどさ、うちの中学の女子がそのミクシーってので知り合った男に脅されてんだと。俺は塾で忙しいからお前ちょっと調べてくれよ。どうせ暇だろ?」 「別にいいけど。何を調べたらいいの?」 「よし、じゃ詳しい話してもらうからちょっと待ってろ」
電話からガサゴソ音がして意外な声が聞こえてきた。 「のび太さん?」 「しずかちゃん!」 「いきなり電話でこんな話しちゃってごめんなさいね。スネ夫さんがパソコンのことならのび太さんが詳しいからって…。迷惑じゃなかったかしら」 「どうせ暇だから…」 「よかった。実は私の友達のことなんだけど───」 電話でしずかちゃんと話すなんてどれくらいぶりだろう。 そんなことを考えながらのび太は携帯を握りしめるのだった。
「ふぅよかったぁ。のび太さん調べてくれるって」 携帯をスネ夫に渡しながらしずかは微笑んだ。 「しかし今日ののび太は笑ったよなー。しずかちゃんもぶっちゃけ迷惑だったでしょw」 うつむくしずか。 「え?なんのこと?今日学校で何かあったの?」 スネ夫、のび太、しずかは同じクラスだが、出来杉とジャイアンは隣のクラスだった。 「あいつさ、授業中にノートにしずかちゃんの名前を───」 「もういいじゃない!」
意外なほどの大声に周りの客もこちらを振り返る。 「どうしたのしずかちゃん。何ムキになってるの」 スネ夫は少し顔を引きつらせながら時計を覗き込むと 「いっけね、今日塾があるんだった。じゃお先!」 と言い残すと、そそくさと店を出て行った。 「そろそろ私たちも帰りましょうか」 しずかが席を立ちかけると 「ねぇしずかちゃん」 いつになく神妙な面持ちの出来杉。 「どうして僕と付き合ってくれないの?」 しずかは立ったままうつむいた。
「僕に悪いところがあるなら直すよ。それとも他に好きな人でもいるの?」 しずかは腰を下ろして 「ごめんなさい。そうじゃないの。今はまだ付き合うとかよくわかんないし…」 「もしかして昔ドラえもんに「しずかちゃんは将来のび太くんと結婚する」って言われたのが引っ掛かってるの?」 しばらく間を置いた後 「違うわ。誰か他の人が好きとか、そういうことじゃないのよ。ごめんなさい」
出来杉は氷が解けてすっかり薄くなってしまったコーラを啜った。 「それじゃ私、バイオリンのレッスンがあるからこれで」 「うん、僕の方こそなんかごめん」 二人は気まずい空気を残して店を後にした。
エロでしょ?
一方のび太はしずかとの電話を切った後、mixiのページを開いた。 もうログインしなくなってかなり経つ。 最初は珍しくていろいろやったのだが、ネット上でも他人とのコミュニケーションがうまく取れず、マイミクもほんの数人だけだった。 日記をマメに更新すれば良いのだろうが、それもあまりしなかった。 何より日記にするようなネタがないのだ。 パスワードを何回か間違えた後ようやくログインすると、1件の新着メッセージがあった。
見ると差出人のハンドルネームはいい加減なアルファベットの羅列だった。 メッセージにはmixi内のリンクが貼られていた。 他には何も書かれていない。 のび太は不審に思いながらもそのURLをクリックすると、誰かのトップページに飛んだ。 「誰だこれ」 至って普通のプロフィールである。 現住所は東京、性別は男となっている。 日記は全体公開にしてあるようだ。
ふと目をやると「中学生ゲットだぜwwww」という日記のタイトルが目に飛び込んできた。 そこには、一枚の写メが載せられていた。 本人であろう若い男(20代前半だろうか)と、目線の入った若い女の子がうれしそうに笑っている。 「これってもしかして…」 しずかの言っていた友達の名前は確かミドリちゃんだった。 のび太はミドリちゃんと同じクラスになったことはなかったものの、ボンヤリとではあるが顔は覚えていた。 見れば見るほどミドリちゃんに見えてくる。
(でもこの人こんな日記をよく全体公開にするなあ)と思いながら下にスクロールすると、日記の公開範囲が「一部の友人まで」となっていることに気付く。 「あれ?」 クリックすると数人の名前が出てきた。 しかしのび太の名前はない。 一部の友人どころか、マイミクでもないのだから当然だ。 「なんで?バグってんのかな」 のび太は彼のトップに戻ると、たくさんある日記を上から順番に読んでいった。
古いネタ引っ張ってきたなw
何時間経っただろう。 辺りはすっかり暗くなっていた。 のび太の両親も寝てしまったようだ。 のび太は晩ご飯を食べないことが多い。 夜中までこうやってPCをいじりながら、適当に台所からお菓子などを持って来ては机で済ますことが多い。 最近はのび太のママも「ごはんよ」とのび太に声を掛けることが少なくなった。
上げるの早いけど用意してあったのか?
mixiやってた頃に書いたやつだからねw
更新はっや
集中して画面に向き合っていたせいだろうか、のび太は肩に疲れを感じ、イスにもたれてうーんと伸びをした。 すると窓にコツンと何かが当たる音がした。 窓を開けると、下にはジャイアンが街灯に照らされて手招きをしている。 「おーいのび太。ちょっと顔貸せよ」 傍若無人のジャイアンでも、夜中の静かな住宅街では大声を控えるという程度の常識は身に付けたようだ。 「ちょっと待ってて」
中学に入ってからジャイアンはますます凶暴になり、他の小学校から同じ中学に上がった連中はみんなジャイアンを恐れていたが、幼馴染ののび太たちに対しては、さほど暴力を振るうことがなくなっていった。 確かに機嫌が悪いときのジャイアンは怖いが、今ではのび太も以前ほどジャイアンを恐れなくなった。 グレて学校にあまり来ないジャイアンにとって、落ちこぼれののび太は同類だという気持ちがあるのかもしれなかった。 こっそり家を出ると、ジャイアンの他にもう一人男子がいた。
髪は長く金髪で、テラテラと光るジャージのようなものを着ている。 眉も丁寧に剃り、だらしなくガムをクチャクチャと噛んでいる。 「チース」 ジャイアンの後輩だろうか。 頭を下げることなくあいさつをしてきた。 「空き地行こうか」 さらに恰幅のよくなった巨体を揺すりながらジャイアンが歩き出した。
昔よく来た空き地に着くと、ジャイアンは定位置かのように土管にどっかと腰掛けた。 「で、話ってなに?」 「俺の入ってる族のステッカーをよ、お前にも買ってもらおうと思ってな」 ジャイアンはそう言うとポケットからタバコを取り出して火をつけた。 「族って暴走族のこと?」 「ああ」 煙を吐き出す姿は堂に入っていて、とても中学生に見えない。
「いくらするのか知らないけど、僕にはそんなお金ないよ。スネ夫に頼んだ方がいいんじゃない?」 「あいつはダメだ」 ジャイアンはタバコを投げ捨て、吐き捨てるように言った。 「たまに俺と学校で会うと、サッと逃げて行きやがる。俺は友達だと思ってたのによォ」 「今のジャイアンを見たらそれも仕方ないよ。それにスネ夫は勉強で忙しいだろうし」
「のび太だけだよな、昔みたいに俺としゃべってくれるのはよ。スネ夫にしたって出来杉にしたって、しずかちゃんだってそうだ。何なんだよあいつら!ドラえもんがいた頃はよォ────」 のび太の顔が強張る。 「あ、すまねえのび太」 「…いいよ」 ドラえもんがいなくなってから、のび太たちの間でドラえもんの話題はいつしかタブーとなっていた。
「しかしお前アレだよな。この話題が出たときってすげえおっかねえ顔するんだよな」 のび太はそれには答えず 「とにかく僕は無理だから他をあたってよ」 と言い残して空き地を去ってしまった。 「剛田さん、あいつ剛田さんのツレなんスか?何かショボイ奴ッスね」 「お前には関係ねえ」 ジャイアンはのび太が去った方をぼんやり眺めていた。
「それにさっき言ってたドラえもんとかって何なんスか?ヘンなあだ名の奴ッス───」 「うるせえつってんだろ!!」 言い終わらないうちに、ジャイアンの拳が男の顔にめり込んだ。
-------------------------------------- ジャイアンは後輩と共に、暴走族の集会に来ていた。 けたたましい爆音が辺りにこだまする。 今日は20台くらいの単車と数台の車が集まっていた。 規模としてはなかなかのものであった。 そこから少し離れた場所に、ジャイアンはチームの幹部といた。 「剛田ァ、最近調子いいみたいじゃねえか」 「とんでもないッス」 ジャイアンが属している暴走族は、他のそれと比べ若干性質が異なっていた。
暴走族というからには、もちろん暴走行為を主体とするのだが、このチームにはもうひとつ大きな別の顔があった。 ステッカーをはじめとして、パーティー券やバイク用品など様々なものを人を介して売りつけていき収益を上げる。 いわゆるマルチ商法だ。 この収益は、バックについている暴力団の貴重な収入源となっていた。 ジャイアンは持ち前の強引さ、義理堅い性格も手伝ってか、かなりの子を開拓・フォローし、めきめきと頭角を現すようになっていた。
そんなコミュがあったなw
「この調子で頑張りゃ幹部も夢じゃねえぞォ」 ユタカという名のこの幹部も、チームの後ろ盾となる暴力団構成員である。 サラッとした肩まで伸びた髪にピアス、腕には派手なロレックスがはまっている。 大きくはだけたシャツの胸元には金のネックレスが揺れていた。 暴走族というよりホストといった風貌であった。 「剛田ァ、今日はヨ、お前にいい話を持って来てやったんだ」 ユタカは口元にいやらしい笑みを浮かべた。
「いい話っスか」 悪党の持ってくるいい話が、本当にいい話である確率はかなり低いと相場は決まっている。 「まァここじゃナンだからヨ、こっち来いよ」 強引に肩を組まれ、引きずられるようにしてジャイアンは奥の暗がりへと連れて行かれた。
ジャイアンがこの暴走族に入ったのには理由があった。 ジャイアンが中学に入ってすぐ、父が交通事故によって急逝したのだ。 父に任せっきりだった剛田商店の経営を急遽母が引き継ぐことになったのだが、所詮は素人の経営。 これまで父の営業力で獲得した大口顧客がひとつ、またひとつと離れていき、剛田商店は倒産の危機に瀕していた。 母は夜な夜な内職を行って、何とか父が築いたこの店を守ろうとしていた。 この暴走族に入った目的は、それを目の当たりにしたジャイアンの、中学生なりの精一杯の答えだった。
「コレ何だかわかるか?」 ユタカはポケットから小さな包みを取り出し、ポンとジャイアンに投げて寄こした。 約3cm四方のビニールの包みの中に、茶色の枯れ草のようなものが入っていた。 「──大麻だ。俺たちはクサって呼んでるがな」 ジャイアンはゴクリと唾を飲み込んだ。 大麻。マリファナ──。これが麻薬であることくらいジャイアンも知っている。 「コレを捌きゃお前の実入りもハネ上がるぜ」 ヒヒヒと下品な笑い声が耳に入る。
何も言わないジャイアンに対し 「何だお前。ビビってんじゃねえだろうな。」 「ユタカさん、これって犯罪なんスよね。俺捕まったらどうなるんスか」 「ば~か。おめえ中坊だろうが。間違っても刑務所なんかにゃ入れられねえから心配すんナよォ!ぎゃはは」 麻薬に手を出したらもう後には戻れなくなる。 もし少年院に入ってしまったとしたら、母は自分をどう思うだろうか。 拳を固く握り締める。 こめかみを汗がつたう。
「おい、まさかテメエ断るつもりじゃァねえヨなぁ?お?」 ユタカは相変わらず下品な笑みを浮かべてはいたが、もう目は笑っていなかった。 ジャイアンの脳裏に夜中内職を続ける母の背中がよぎった。 「…話聞かせてもらえますか」 「さすが剛田。俺が見込んだだけのことはあるナぁ!」 ぎゃははと笑い、ユタカはジャイアンの肩に手を回しギュっと掴んだ。 骨ばって血色の悪いその手は、まるで悪魔の手のようにジャイアンの肩に食い込んだ。
ーーーーーとりあえずここまでーーーーー
次の週末、のび太、スネ夫、出来杉、ミドリ、しずかの5人は歌舞伎町のマックにいた。 例のmixi男を呼び出すことに成功したのだ。 待ち合わせは午後4時にアルタ前。 のび太たちは作戦会議兼遅めの昼食を摂っていた。 「───というわけなんです」 ミドリは今にも消え入りそうな声でそう言った。 「とにかくのび太くんが集めてくれた情報を盾に、向こうの口をどうにか塞ぐしかないようだね」と出来杉。
「いくら中学生といったって男が3人もいれば相手もおかしなマネはできないだろうしね」 スネ夫はいつも自信に満ちている。 一方のび太はここから逃げ出したくて仕方がなかった。 「僕なんかいたって戦力にならないばかりか、逆に足手まといになるだけだよ」 食い下がってみたものの、スネ夫に 「ばーか。こういうときは質より量なんだよ」 と言われ、何も言い返せなくなってしまった。 「野比くんごめんなさい。面倒なことに巻き込んでしまって…」 ミドリはしきりに恐縮している。
「いいのいいのミドリちゃん。こいつは少し鍛えてやらないといけないんだから」 スネ夫はケラケラと笑う。 「じゃ私はそろそろ行くわね」 しずかはここで離脱することになっていた。 万一を考え、しずかに何かあってはいけないとのみんなの意見だった。 「ちょっと早いけど僕たちも行こうか。先に現場の状況も見ておきたいし」 さすが出来杉。逃げたい一心ののび太とは大違いだ。 「その前に私トイレ行ってきていいですか。何だか緊張しちゃって」 不安げに微笑むミドリ。
「だよねー。どうぞどうぞ」 ミドリがトイレに姿を消すと、すかさずスネ夫が 「しかしわかんないもんだね。あんな大人しい子が出会い系なんかで男にひっかかるなんてさ」 「mixiは出会い系じゃないよ」 「でも結果的には一緒じゃねえかよ」 「まぁそういう奴もいるかもしんないけどさ…」 「おまたせー」 明るい声に振り向くとミドリが戻ってきていた。
あれ?トイレで化粧でもしたのかな。何だか印象が変わった気がする。 「そうそう、今日はみんなに頑張ってもらわなくちゃいけないから、わたしスペシャルドリンクを持ってきたんだ」 ミドリはそう言うとカバンから小さな栄養ドリンクを取り出した。 「はい。はい。はい」 トン、トン、トンと順番に目の前に小ビンを並べて行く。 スネ夫と出来杉にはリゲイン。のび太の目の前に置かれたのは見たことのない銘柄だった。
「ツヨクナール?」 ラベルには簡素な文字でそう書かれているだけだった。 「なんでのび太だけ違うやつなの?俺こっちがいいな」 と手を伸ばすスネ夫に 「ダメ!これはのび太さんのなの!」 凄い剣幕にスネ夫も思わず怯んだ。 のび太さん?さっきまで野比くんって呼んでたのに。 のび太は何とも言えない違和感を抱いていた。 「ミドリちゃん、なんかさっきと様子が違くない?」 「だよな」 スネ夫と出来杉はリゲインのフタを開けながら口を揃えた。
「そんなことないわよ」 ニコニコとした笑顔を浮かべている。 「さ、のび太さんも飲んで」 「あ、うん」 のび太がフタに手をかけてミドリに目をやると、こちらを見て微笑んでいる。 フタを開けると、何だか漢方薬のような匂いが鼻をついた。 怪しいなぁと思いながらものび太はそれを飲み干した。 「さ、それじゃ行きましょうか」 ミドリはさっさと席を立つと、一人で行ってしまった。 3人はお互いに顔を見合わせ、首をかしげた。
マックからアルタへは歩いて数分の距離だ。 アルタ前に到着して時計を見るとPM3:50だった。 4人が辺りをキョロキョロ見回していると、背後からミドリの肩が叩かれた。 「よう」 みんなが一斉に振り向くと、絵に描いたような、いわゆるチャラ男が立っていた。 「お、今日はお友達が一緒なのか?」 出来杉が一歩進み出て 「あなたが服部さんですか」 いきなり本名を言い当てられた男は眉をピクリと動かした。
「誰だよお前。ミドリの同級生か?」 大人の男性の威圧感が3人を襲う。 「まぁいい。とにかくここじゃ何だから、どっか話できるとこに行こうか。ミドリ行こうぜ」 と言うとミドリの肩を掴み歩き出した。 慌てて追いかける3人。 しばらく行くと白い高級車の前で男が立ち止まった。 「乗れよ」 誰もがヤバイと感じながらも、みんな口には出せない。 ビビってるところを見られたくないのだ。
男が助手席を開けると、ミドリはさっさと乗り込んでしまった。 「お前らも早くしろよ」 3人はお互い顔を見合わせ、恐る恐る後ろに乗り込んだ。 車は都心を抜け、晴海の方へと向かった。 男は携帯を取り出し、 「おう俺。今から例のとこ行くからよ。──ああ。──あと20分くらいかな。みんなにも声かけといてくれよ」 携帯を切って鼻歌を歌いだした。 「これからどこに行くつもりなんですか」 出来杉の声は、心なしか少し震えているようだ。 男は鼻歌を歌ったまま何も答えない。
のび太が隣のスネ夫を見ると、膝が小刻みに震えている。 のび太も喉がカラカラに渇いて、うまく声が出せそうになかった。 言葉を口にすると声がひっくり返ってしまいそうだ。 のび太は震えないように、膝を強く握り締めた。 3人の動悸だけが車内を支配していた。 助手席のミドリの様子は全くわからない。 ミドリもさぞ怯えていることだろう。 程なくして車は晴海埠頭へと入った。 立ち並ぶコンテナの一角にゲートの開いたボロボロの倉庫があり、車はそこへ入っていった。
中は裸電球がポツリポツリあるだけの、大きめのガレージといった感じであった。 男はさっさと車を降りると、 「降りろ」 と、ドスの利いた声を出した。 のび太たちが車を降りると、待ち構えていたかのように、倉庫の中に数人の男が現れた。 「ぼ、僕たちをどうするつもりなんだッ!」 スネ夫がヒステリックな声を張り上げた。 見ると膝がガクガクと震えている。 出来杉も気丈な素振りを見せてはいたが、顔色は真っ青だ。
のび太は冷静に周りを観察している自分に驚いていた。 さっきまで激しかった動悸も、膝の震えも今は治まっている。 それに体中に不思議な力と高揚感が満ちてくるのを感じる。 これは一体何だろう、とぼんやり考えていると、物陰から現れた男が音もなくスネ夫に近付き、いきなりスネ夫の顔を殴りつけた。 「ギャッ」 数メートル飛ばされたスネ夫は、うずくまったまま動かない。 「何するんだ!」 出来杉はその男に殴りかかったが、ひょいと簡単に避けられ、反対に男の拳が出来杉の腹にめり込んだ。
「ううっ」 腹を押さえて倒れこむ出来杉。 「お前ら中坊が大人を舐めるとどうなるか教えてやるよ」 服部は口を歪めながら出来杉に更に歩み寄った。 「──舐めてんのはお前の方だろ」 低い声でのび太が呟く。 スネ夫と出来杉が同時にのび太を見た。 「んだとコラァ」 服部はのび太の方へと向きを変えた。 「いい大人が子供相手に情けねえなぁ」 ジャイアンならともかく、のび太の口をついて出る言葉とはとても思えない。 のび太自身も夢に浮かされているような気分だった。
自分の意思と関係なく、勝手に口が動いているかのようだった。 「テメエっ!」 服部がのび太に殴りかかった瞬間、服部の身体が宙を舞った。 のび太は他の男たちに向き直ると、 「お前ら中学生を舐めてんじゃねえぞ」 そして、オラァァ!という叫び声と共に他の男に突っ込んで行き、次々に殴り倒していった。 あっけにとられたのはスネ夫と出来杉である。 目の前の光景を信じられないといった顔で眺めている。 当然だ。
© 2015-2017 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
© SUGIYAMA KOBO
当サイトのコンテンツ内で使用しているゲーム画像の著作権その他の知的財産権は、当該ゲームの提供元に帰属しています。
当サイトはGame8編集部が独自に作成したコンテンツを提供しております。
当サイトが掲載しているデータ、画像等の無断使用・無断転載は固くお断りしております。
もしドラえもんがいなくなったら、 のび太たちはどんな人生を送ることになるんだろう。 そんな俺の妄想で描く空想小説。 なるべく原作の世界観を踏襲するようにします。