寝たままぐうたら映画を見たりゲームをしたりしたい!そんな怠け者の夢を叶えてくれるガジェット、スマートグラスの最新製品を触ってみたので、その模様をお届けします。
寝っ転がりながらゲームがしたい!
概してゲーマーというのは視力も生活習慣も悪ければ姿勢も悪く、隙あらば寝転んだり何かにもたれかかったりという楽な姿勢でゲームしたいなあ…と考えているものだ。
冒頭のっけから係数1の、つまり筆者の自己体験でしか無いことをゲーマー全般のことのように言い換えてしまっていてたいへん申し訳ないが、え、でもみなさんこういうこと考えたりしません? するよね?? いやだってやっぱり寝転びながらしたいじゃないですか、ゲームとか。そういうことを、筆者は昨年の夏にCOVIDで高熱を出してベッドにへばりつきながらウンウン唸っているときにものすごく考えました。起き上がって椅子に座るのもしんどいけれど、それはそれとして暇なのでせめてNetflixでも……あわよくばこの機会に未クリアのまま積んであるSteamの積みゲーを少しでも消化したいとか……
さて、技術の進歩というものは長足なもので、そういうゲーマーの……というか怠け者の悪い夢みたいなことが本当にできるようになってしまった。今日ご紹介するのは米国のカリフォリニアにあるVITURE社が開発した、「VITURE One(ヴィチュア‐ワン)」というXRグラスだ。XRという言葉は人によっては耳慣れないかも知れないが、これはVR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)といった、現実と仮想世界を混合させる技術の総称だ。
この「VITURE One」について言えば、スマートグラスと総称される類似製品の中でも映像を見る機能に特化したもので、サングラス型のガジェットをつけると目の前に大きな画面が表示され、その画面上で映画やゲームなどを楽しめるようになる。早い話が、どこでも持ち歩けてどこでも見れる大画面モニターだと思うのがわかりやすいかも知れない。
ということで、前置きが長くなってしまったが、今回はこの製品を試させてもらうことができたので、その模様についてお届けする。ちなみに筆者はスマートグラス初心者なためあまり凝った比較検証などはできないが、ゲームや映像作品を楽しむ上で気になりそうな点はなるべくしっかり見たつもりだ。
”VITURE One”を使ってみよう
で、渋谷にあるゲームエイトオフィスに届いた「VITURE One」がこちら。なんか箱が多いな…と思っていると、どうやらこれ、本体のグラスの他にいくつかの外付けガジェットがあるらしい。本体グラス単独での購入、使用も可能ということだが、今回は一式フルセットのものをお借りできた。
なんか製品性能に全然関係のないレポートで恐縮だが、なんというか隠す気のない高級感と言うか、「私はデキる奴ですよ」感がすでに箱から漂っている。なんでただの箱がガルウィングみたいな開き方するんだよ……
箱から出した製品がこんな感じ。見た目はVRゴーグルほどゴテゴテはしておらずすっきりしていて、重さもそれほど感じない。これなら電車の中でつけていても「なんかイケイケのやつおるな」と見られるくらいでなんとかなりそうだ。
筆者もそうなのだが、ふだん眼鏡をかけている人にとって、こういうタイプのガジェットは兼ね合いに悩まされそうなもの。ただグラス側で度数の調整(0.00D > -5.00D)ができるようになっており、この部分のツマミをいじれば自分の視力に合わせて映像のピントを合わせることが可能。
左のつるの部分にボタンがあり、これでコントラストや音量の調節もできる。ちなみにスピーカー内蔵で、デフォルトでステレオ再生が可能。ただし音は外にも漏れてしまうので、公共の場所で使うのであればBluetoothイヤフォンを接続したりすることが必要かもしれない。
本体には電源やバッテリーはないが、専用のType-Cケーブルで繋ぐことで、このままPCやスマホに接続してミラーリングできる。ただスマホは対応していないものもあり、特にiPhoneが非対応なのは痛いポイントだ。とはいえこれは「直接」繋ぐ場合の話。後述する方法を使えば、iPhoneだけでなく、SwitchやSteamDeckのような携帯ゲーム機と接続することもできる。
それに使うのがこのネックバンドだ。これを首にかけて本体と接続することで、できることの幅が大きく広がる。というよりも、このネックバンドこそ第二の本体であり、実はコイツ、こんな見た目だがAndroid系のOSを搭載しており、アプリの起動やWi-Fi接続が可能。つまりこれとポケットWi-Fiやテザリングなどの通信手段があれば、それだけでネットもできるし映像もみれちゃうのだ。
アプリなどの操作はこの部分にある十字キーとボタンで行う。文字入力などは操作しづらいが、首の動きを感知して自身の視線をマウスカーソルのように使うヘッドコントロール機能が便利だったこともあり、個人的にはそれほど不便は感じなかった。
またネックバンドの方は充電式で、直接Type-Cケーブルを繋いで充電してもいいのだが、ケース自体も充電装置になっており、こちらに繋いでも充電できるようになっている。これは持ち歩く際には便利そう…ではあるがケース自体がやや大きめなので、通勤通学などにこのケースを持ち歩くかなあ? というのはちょっと微妙かもしれない。
繋いでみると……映像すげー!! 本当に目の前にフルHDクラスの大画面モニターがある! ちょっと写真からだと何もお伝えできないのだが、ひとりで喜んでいたら出社中のゲームエイト社員たちがわらわら集まってきて、なんだなんだとみんなで回し使ってみることに。スマートグラス初体験の人も多かったのだが、初めて使ってみるとめちゃくちゃ感動する。た、楽しい……!
予想はできていたことだが、寝転んだまま天井を眺めながら映像を見るのはやっぱり最高に気分がいい。これだよ、これこれ。去年の夏に困っていた自分に送ってあげたい。
そして大事なことだが、この「VITURE One」は映像だけではなくゲームも楽しめる。Switchなどのゲーム機+グラス本体+ネックバンドに加えてこのモバイルドッグに接続する必要が出てくるのだが、これは外付けバッテリーの役割も果たしており、ネックバンドの稼働時間を大きく伸ばしてくれる。
ぜんぶ合体させるとこんな感じだ。専用のケースでSwitchとモバイルドッグをまとめられるのでまあまあすっきりはするが、やっぱりそれなりの重量はある。
プレイ感に関して言うと、目の前に迫った画面でプレイできるため、やはり迫力はすごい。FPSなどであればかなり没入感高くプレイできそうで、相性は良さそうだ。加えてこれなら持ち運びやすいので、友人同士で集まって強力・対戦を行う通信ゲームを遊ぶのにも向いていると感じた。
また専用アプリを使用することで、PCやPS5、Xboxなどをリモートで操作してプレイするということも可能になっているらしい。友達と旅行したら、夜はホテルの部屋で朝まで大画面でCivilization6を夜通しプレイだ!みたいなのもできるってコト!? まったくすごい時代になったもんだぜ。
良かった点と気になった点もろもろ
さて、ここからは、実際に使ってみて感じた良かった点、逆に気になった点などをざっくりまとめてみる。
まず良かったのはなんといっても映像の没入感が高いこと。VRなどと違って、あくまで眼の前に四角のディスプレイが現れるだけなのだが、ほとんど視界いっぱいに広がった画面で見る映像はやはり迫力がある。ネックバンドのおかげで、スマホのミラーリングなどをしなくてもWi-Fi環境さえあればあらゆる場所が映画館になるというのも魅力的だ。
持ち歩けるディスプレイ、という点も良い。筆者は友達同士で集まって遊ぶゲームが大好物なのだが、例えば持ち歩けるSwitchなんかでも、操作性を考えるとプロコンの方がいいゲームは結構あるし、それなら家でDiscord繋ぐほうが良いか…となってしまうことは多い。オンライン通話が嫌いなわけでは全然ないのだが、リア友と会ってポテチ齧りながら遊ぶことだけから得られる栄養素もあるんだよなあ。そういう意味で、こういうガジェットはかなり嬉しい。
あとは冒頭でも述べていた通り、寝っ転がってゲームしたり映画を見たりできるのはやっぱりサイコーだ。古代ローマ人は寝そべりながら食事をしていたと言うが、そういう感じに近い(?)。文明が進んでいくと、人間は退廃的な悦楽を求めてしまうものなのかも知れない。
逆に気になった点でいうと、まずはバッテリーの持ちだ。ネックバンドの連続稼働時間はカタログスペック上で最大3時間。映画なら1本みると力尽きてしまうくらいで、筆者のソウルムービーである『バーフバリ』の前後編(約5時間)をまとめて見ることができない。まあ外出先でこんな大作映画を見ようと思う人間はそういないだろうが、充電の手間を考えると個人的にはもうちょっと頑張って欲しい。
また説明書にも記載はあったので予想はしていたが、ネックバンドを使っているとけっこう熱くなってくる。もちろん火傷するほどではないが、よく揉み込んだホッカイロくらいの感じではあり、冷却ファンの音も気にならないと言えば嘘になるだろう。
ARとしての機能、つまりグラスをかけたまま仕事をしたりウォーキングしたり……といった部分ははっきり使いづらいと言わざるを得ない。表示画面を小さくすれば最低限の視界を確保できなくはないが、それでも見えづらいのだ。もっともこれは筆者が普段眼鏡をしている、つまりこのグラスの装着時には視力が落ちた状態で周りを見ていたことが原因かもしれない点は申し添えておくべきだろう。
ネックバンドなしではiPhoneとの接続ができない※、という点も述べていたが、実はこれは使い進めると全く気にならなかった。ネックバンドさえあれば単独で機能するので、そもそもスマホとミラーリングする必要性がほとんど感じられなかったのだ。電力はネックバンドから補われるため、スマホの充電を気にしなくて良いことも嬉しい。このあたりは先行するライバル機器であるNreal Airと比較した際の強みでもあり、また弱点とも言えるかも知れない。
※これについては後ほどiPhone用のアダプタも販売予定とのことなので、そちらを使用すれば直接接続することもできる。
というのも、逆に言えば「VITURE One」の本領が発揮されるのは(グラス単体でも機能はするのだが)ネックバンドと揃ってのことで、それは外出時には余分な荷物が一つ増えるということでもある。充電も可能なケースはおしゃれでいい感じだが、カバンのサイズによってはちょっと持ち歩きづらい。外部バッテリーでもあるモバイルドッグやゲーム機まで持ち歩くならなおさらだ。
とはいえ、ネックバンド込みでの使い勝手の良さはやはり捨てがたいものがあり、ゲームや映像作品にいつでもアクセスできる状態にしておきたい人にとっては、かなり嬉しいガジェットになるだろう。特に長時間の移動を挟む旅行や出張などのお供にはピッタリだ。
とまあ、素人なりにいろいろと感想を述べてみたが、みなさまの参考になっただろうか? やはり個人的にはどんな姿勢でも快適に映像を見れる、というのが一番のお気に入りポイント。また家のテレビでゲームしてると家族が…という方にも役立つだろう。まあこれでテレビが買えそうな値段なので気軽に購入できるかどうかはさておき、ゲームや映像を楽しむに役立つのは間違いない。みなさまのゲーム・映画・怠け者ライフが、今後も健やかなることを祈念させていただく!
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(編集・執筆/ena)