2023-12-14

【インタビュー】もこうが”もこう”になるまでの物語!『これは勇気の切断だ』出版記念インタビュー

12月9日(土)、大人気ゲーム実況者「もこう」初の自伝エッセイである『これは勇気の切断だ』がスターツ出版より発売された。今回ゲームエイトは、その発売準備でお忙しいもこう氏のもとにお邪魔して、この書籍についてさまざまなお話を伺ってきた。

書籍の発売を楽しみにされていたファンの方はもちろん、これまでもこう氏のことをあまり知らなかったという人も、共感できるような内容になっているという本書について、ご本人からのメッセージをお届けする!

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もこうが”もこう”になるまでの物語

-このたびは出版おめでとうございます。それではさっそくですが、書籍に関していくつかお聞きできればと思います。まずは11月12日にTwitter(現X)で本書について最初の告知がありましたが、反響はいかがでしたか?

もこう
配信だと「お前もタレントになったんだな……」みたいに荒れちゃったんだけど(笑)、まあそういう意味では結構反響があったのかなと思いますね。

-突然の発表だったということもあって、Twitterのリプとかだと結構驚きの声も上がっていましたね。私も、もこうさんのファンだったので、個人的にもすごく嬉しかったです。

もこう
良かったです。ぜひ買ってください(笑)

-本書の本文紹介の中で『「YouTuberもこうの生き様」って感じやなくて、どっちかというと「馬場豊(編注:もこう氏の本名)の昔話」みたいな本』、という記述がありました。いまこうして自分自身のことを語ってみようと思ったきっかけは何だったか、出版までの経緯なども含めてお話いただけますか?

もこう
2、3年前からスターツ出版さんに「自伝出しませんか」みたいなアプローチを頂いてたんですけど、実はその時は全然そういう気もなかったんですよね。

-へえ、そんなに以前から!

もこう
ちょっとした気まぐれみたいな感じで「もこうじゃなくて、中の人の話を書くだけの本だったらいいです」って返信したら、快諾してくださったんですよ。で、そしたら企画の段階から調べ物とかで手伝って頂いて、僕の昔のニコ生の切り抜きなんかもめちゃめちゃ見てくださってたりとか、それで感銘を受けたっていうところもあります。

だから本当に「出してみようかな」って心変わりしたのはそのおかげですね。僕の生きてきた軌跡……というほどのものでもないんだけど、みっともない恥ずかしい過去を、ひとつの形で残せるっていうのも、いいことなんかなと。

-最初に出版社の方から声をかけられてから出版まで数年かかっているわけですけれど、その間、内容については大きく変わったりもしたのでしょうか?

もこう
書く内容というか、ジャンル的なものは大体決まってはいたんですけど、本を書き始めて自分の過去とかを掘り返す作業をしてる中で、自分自身のことを再発見するようなところもあって、これは結構新鮮な体験でした。自分自身のことも、自分だとあんまりわかんなかったりするんですよね。

編集者の方が僕の昔のニコ生からトピックを探してくれたりとか、「これもっと掘り下げてみましょう」ってアドバイスもらったりとか、本当にお世話になってます。あと、ブログの記事にもう書いていたようなものもありますね。バイトの話とか。

-ボウリングの話とかですね。

もこう
そうですね。ボウリングの話は、当時大学2回生の時の屈辱的な体験をブログに綴ったやつで、当時それ書いてる時だけPV数が普段の50倍くらいになって(笑)、ちょっとした作家気分を味わってましたね。「もこう早く続き書け!」みたいなこと言われたり。

元々つらい思い出を少しでも発散したいと思って始めたんですけど、だんだん「ネットの人の期待に応えなきゃ」みたいなプレッシャーで書くようになっていって、それがひとつの作品になったというか。振り返ってみると、こういうのは当時の自分やから書けたんやな、みたいなことを思ったりもしました。

-当時のことを振り返りつつ、心境の変化なんかも書かれているんですね。ちなみに、本書はどのような方に手にとって頂きたい、と考えていますか?

もこう
どういう人、と聞かれると難しいんだけど、もちろん僕に興味持ってくれてる人にも読んでほしいし、あんま僕のこと知らん人にもできれば読んでほしいです。それから、人生に迷ってるみたいな人にも読んで欲しいですね。

-人生に迷っている人……。そういった方にも共感を持ってもらえるような内容になっているということでしょうか?

もこう
そういうの読むことで、ちょっと勇気が湧くってあると思うんですよ。自分と同じような境遇……自分に自信がないとか、社会のレールから外れたみたいな人が、ちょっとだけ勇気を持って、自信を持ってくれたらいいかなっていう気持ちはあります。

エッセイならではのもこう先生の想いの詰まったエピソードも!

-本書に収録されているエピソードの中で、特に印象の強いもの、個人的な思い入れのあるお話などはありますか?

もこう
ええ、なんやろう、難しいな……(笑)

-もしくは編集さんの方ですごくお気に入りのエピソードとか……

(編集)
そうですね、これは本当に僕の意見なんですけど、「定期券を買ってきた父親にブチ切れたエピソード」とか好きですね。

もこう
確かにあんまり話したことない気がする。

-い、一体何が……(笑)

もこう
当時、かなり複雑な高校生だったんですけど、なんていうかな、とにかく劣等感の塊だったんですよ。通信制高校に通ってて、全日制の高校に通ってる人に対するコンプレックスみたいなのがめちゃくちゃ強かった時期で、かといって何かそれを宥められてもイライラするというか……。

そういう感情ってあると思うんですよ。今じゃそんな感情にはならんやろうなって思うんですけど。そういう意味では10代くらいの若い人とかだったら共感してくれるかもしれへん話です。

(編集)
これは配信なんかではあんまり話されてないですよね。綺麗ごとだけじゃなくてもこうさんのある意味見せたくない本心まで書いてくださっている部分がいいなと思っていました。あとですね、あとがきも素敵でした。あんまり聞かないもこうさんの秘めたる想いというか……。私も読んで「そんなこと思ってらしたんだなぁ……」とデスクで泣きました。

-そ、そんなに!それはめちゃくちゃ気になりますね。

もこう
あれは確かに配信じゃ語らない心境だったかもしれないですね。実は寝起きに布団の中でスマホのフリック入力で書いたやつをコピペして送っただけなんですけど(照)

-本書はさまざまなエピソードが詰め込まれているということなんですが、エピソード数でいうと全部でどのくらいになるのでしょうか?

もこう
ざっと25個くらいありますね。このうち初出しのエピソードがどのくらいかな。配信とかで言ってるのを自分でも忘れているのも結構あるかもしれません。でも、それも含めてもう何年も思い出してないなってことがいっぱい頭の奥の引き出しから出てきて、本を書かなかったら絶対に一生忘れたままやったんやろうなっていうことがたくさんあります。だから、同じエピソードでも昔配信で言うのとはまた違った視点とか想いで書いている部分はあるかなと思います。

-本書については「もこうがもこうになるまでの全て」という紹介もありました。『馬場豊』としての人生は、配信者”もこう”にとっても重要な土台だったのでしょうか?

もこう
配信者には、なるべくしてなっていったっていうとおかしいですけど、時代がたまたま噛み合ったっていうのはあると思います。家でボソボソ喋ってるだけで職業になるなんて、普通あり得ないじゃないですか。

僕の性格が、人と群れたりとか何か一緒にやるとかが苦手やったんで、そういう意味では僕の性格そのものが結局もこうを作ってるのかなっていう気はしますけどね。今でもたまに出るんですよね。自分のめんどくさい素というか、不機嫌ハラスメントみたいなものが。ちょっとしたことで不機嫌になるんですよ。それで周りの人をコントロールしようとする癖が昔からあって。公式配信で仲いい配信者と耐久配信やってる時に出たこともあるんですよね……。

-今の”もこう”っていうものを作ってきた、まぎれもない自分自身の一部ではあるけど、その自分とどう付き合うかもまた悩みのタネでもある、みたいな。

もこう
難しいな。その辺は自分でもまだどうすればいいのか考えている途中でもありますね。

-でも、こうしたことはやっぱり多くの方が同じように悩まれていることなんじゃないかという気もしますね。

逃げることは必ずしも悪いことではないのかもしれない「これは勇気の切断だ!」

-タイトル『これは勇気の切断だ』についてお聞きします。「勇気の切断」は2009年頃にニコニコ動画で流行し、現在も有名なネットミームのひとつです。ただこれは、率直に言うと「オンライン対人ゲームで切断行為を行うとウケが取れるんだ」みたいな誤解を招きかねないような言葉でもあって、その意味で本書は攻めたタイトルづけになっていると思います。このタイトルはどのような流れで決定したんですか?

もこう
ええ〜と、どういう流れでしたっけ。

(編集)
もこうさん自身の言葉で、かつ本書の中身が伝わるタイトルがいいよねっていうお話をしていましたね。ご自身の言葉であればやっぱりファンの方にも伝わりやすいでしょうし。

もこう
あんま内容関係ないような気もするというか、ノリで決めたようなところもありませんでした?

-私としてはタイトルに「勇気の切断」を選んだ背景として「もっと勇気を出して一歩を踏み出してもいいんだよ」みたいなメッセージ性があるのかな、なんて思ったりもしているのですが。

もこう
それはちょっと無理やり感あるな(笑)でもそういう風におしゃれに解釈してくれたら僕としては都合がいいっすね。実際だってこんなんね、ポケモン対戦中に負け確になって切断しただけのクズ行為の象徴なんで。

(編集)
本の中では、社会人を辞められてゲーム実況活動に集中する時のことを「社会からの切断」と書いてくださってましたね。逃げることは必ずしも悪いことじゃないと。もちろん無責任にそれを肯定するわけじゃないんですが、そういう部分で内容とリンクした素敵なタイトルだと勝手に思っています!もこうさんの解釈と違ったら申し訳ないですけど。

もこう
いや、そういうことにしましょう(笑)「何それ?」って感じのものでは絶対ないですしね。僕らしいタイトルというか。

-すごく綺麗にタイトルを回収していきましたね(笑)ちなみにですが、タイトルに関連して、オンライン対人ゲームの切断行為について、なにか読者の方にメッセージ等あればお願いします。

もこう
切断はねぇ……絶対にしちゃいけない!!相手の気持ちを考えてほしいです、そういうことをする奴は。

-ありがとうございます(笑)

もこう
ちなみにこの「勇気の切断」っていうワード、このあいだVtuberの兎田ぺこらちゃんも使ってくれてたんで。そこは強く書いてほしいですね。あの大人気Vtuberも使うネットミームを生み出した漢と。
(編注:強く書かせていただきました)

実況者としてのこれまでとこれから

-ゲーム実況者としての活動についても、少しお聞きできればと思います。最初に動画投稿を始めたきっかけは何だったんでしょうか?

もこう
好きな実況者さんがいたんですよ。ゆとり組のしんすけさんとか、目隠しでピカチュウ版をクリアするっていうあなごみさんとか、ジャック・オ・蘭たんさんとか。そういう人達の動画を見て自分もやりたいなって思ったのがきっかけですかね。

あとバトレボの実況動画とか見てて「もうちょいおもろい動画作れるんちゃうかな」みたいなことを思ったのも正直あったんですよ。

-これまでのゲーム実況者としての活動を振り返って、特に思い入れのある作品やシリーズなどはありますか?

もこう
なんやろな。ポケモンの動画とかはマジでおもろいんじゃないかなって思っちゃう。あと『ぷよぷよ』とかですかね。ぷよぷよも一時めちゃめちゃ頑張ってて。プロゲーマーにもなってたんで、あれはエンタメと競技の境界線の難しいところをギリできてたな、と思います。エンタメと競技を共存させるというのは、自分の中で永遠のテーマでもあるんですよね。

-これは私の個人的な意見ではあるんですが、ポケモンの動画なんかでも、現在は競技プレイヤーの方々がメインストリームの一角として、かなり人を集めていますが、こうした現在の盛況も当時もこうさんや同世代の方々が盛り上げてきた対戦実況があったからこそだと思います。黎明期からこのコンテンツを扱っていた実況者として、現在の盛況についてはどのように捉えていますか?

もこう
そういう時代になったんだなと思います。今は明らかにゲーム上手い人の方が評価されますよね、間違いなく。今から僕がゲーム実況やっても絶対伸びてない。ある程度上手くて、喋れて、他人ともコミュニケーション上手く取れて、変なこと言わない人が伸びるから。一昔前のインターネットにおったひねくれ者の世界じゃ、もうないなって気がしてます。

-今までと現在で、実況のスタイルを変えているとか、あるいは一貫して心がけていることはありますか?

もこう
いやもうそれは昔の方が全然気を使ってなかったですよね。今だと実況中に物騒なことを言っても自分でピー音入れちゃいますもん。ちょっとこれは聞かすのアレやな〜みたいな。

たまに6年前とかのスプラトゥーンの実況を見返すんですよね。なんかおすすめに上がってくるんですよ「もこう発狂まとめ」みたいなんが。やっぱね、その時の方がおもろいんすよ。信じられないことを言ってるけど、今じゃ絶対言えないから。そこはちょっと丸くなっちゃったのかな。

-この動画をまだ見てない人がいたら見てほしい、というもこうさんの動画を教えてください。

もこう
ええ、ちょっとぱっと出てこないな……。あ、そうだ、原神ですね。原神は平均1時間半くらいの動画が60本上がってるので、全部見てください(笑)

-これからゲーム実況動画で挑戦したいことや、成し遂げたいことがあったら教えてください。

もこう
う〜ん(長い間)健康で動画を上げ続けることですね!

-最後の質問になります。本書を読まれる方に向けて一言コメントを頂けますか?

もこう
手に取ってくださりありがとうございます。1ページも飛ばさずに読んでください!

※本文中は敬称略

『これは勇気の切断だ』について

書名:これは勇気の切断だ 著者:もこう 価格:1540円(本体:1400円) 発売日:2023年12月9日(土) 発行:スターツ出版株式会社

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