2024年の9月26日から開催された東京ゲームショウ2024のインテルブースにて、「ニーアシリーズ」などで知られるゲームクリエイターのヨコオタロウ氏の特別ステージが開催された。新技術など開発環境が目まぐるしく変わるゲーム業界はどこに向かうのか、という未来への展望を語るステージは非常に興味深い内容になっていた。この記事ではそんなステージの様子を余す所なくお伝えする。
ヨコオタロウ氏とは?
▲画像の右がヨコオタロウ氏。左がMCの夢川閔巳氏。ヨコオタロウ氏は被り物での出演だった。
ヨコオタロウ氏はドラッグオンドラグーンシリーズやニーアシリーズなど多くの作品を手掛けた著名なゲームクリエイター。「ヨコオワールド」と呼ばれる独特な世界観を持った作品は沢山の人々に支持されている。
今回のトークテーマは「未来のゲーム作り」となっており、ヨコオタロウ氏がAIをはじめとする新技術に対しての向き合い方や考えを語ったステージの様子をお伝えする。
「いずれクリエイターという商売はなくなる」
最初のトークは「未来のゲーム作りはどうなるか?」というもので、ヨコオタロウ氏は「AIやコンピューターの登場によりいずれクリエイターという商売はなくなる」と話していた。
技術の進歩によりクリエイターの手によるものでなく、ユーザー自身が作りたいものを自ら作れるようになるのではないかと語っていたのが印象的だった。
既に一部のゲームではイラストなどがAIに置き換わっているなど、AIの影響は既に出始めていて、それが「徐々に全体に広がるのではないか。」ということのようだ。
一方でヨコオタロウ氏は2018年に「将来はAIの下僕になっている」とSNSで発言していたが、AIのインストールが意外と大変でまだ触れられていないとのこと。
AIがクリエイティブを乗っ取るというよりは、AIのアシストを受けて色んな人が様々な物を作成する未来が来ると話していた。現在でもヨコオタロウ氏が管理者としてこういった物を作ってほしいと、作業を他の人にお願いするという形になっている。それと同じ様にAIに作業をお願いする、もしくは作業者がAIによって楽になるのではないかという展望を語っていた。
筆者自身もAIについては期待感と同時に危機感を持っていたので、うまく共存できるという考えには少し安心した。
ヨコオタロウ氏への質問コーナー
AIはどんな存在?
「未来への展望についてのトーク」の次は質問コーナーとなり、ヨコオタロウ氏に事前に準備していた質問を投げかけるというものになっていた。
最初の質問はAIはどんな存在?となっており、「AIは道具であり良くも悪くもない。使う人次第。」とのこと。AIについてはまだ法整備が整っていないこともあり、現在は賛否両論といえる状況だが、あくまでも道具というのはとても腑に落ちる考えだった。
既に使用されている部分はありますか?
シナリオなどに関してはまだそもそもAIを使用する準備ができていないので、使用していないとのこと。一方で、AIに関連する仕事は過去にあったが中止になってしまったそうだ。
脳波でシナリオを書ける時代は来るのか?
前提として脳波でシナリオを書ける時代に、シナリオというものは残っているのか、という前提はありつつも「お客様が見ているものや反応に応じてコンテンツが変化する時代がかならず来る。」と話していた。
ヨコオタロウ氏自身は脳波で作成できるようになったら使いたいか?という質問には、手でキーボードを打ってシナリオを作るのも脳波でも同じだけの時間がかかるのではないか、とのこと。結論としてどちらか「楽な方を使用したい」と”ヨコオタロウ氏らしさ”が見られた。
AIについてゲーム業界はどのように向き合うべきか
AIは沢山のデータから多数決のような形でデータを作成しており、これ自体は昔と変わっていないとのこと。現在のAIによる画像生成や文章生成は多くの人の平均値が出ているだけなので、そうじゃない未来が来て初めてAIとしての魅力が出るのではないかと話していた。
まだまだAIの仕組み自体は発展していないので、ゲーム業界全体で使われるにはAIの進歩が必要そうだ。
クリエイターに対してのメッセージ
ヨコオタロウ氏:ゲーム業界は大きく見えるが、実は意外と小さい業界。言わば小さい村の中で生きて行くの一緒。小さい村にはおばあちゃんがいるじゃないですか、なのでゲーム業界に入る時は、おばあちゃんの顔を思い浮かべながら仕事をすると温かい気持ちになれると思います。
AIをベースに未来への展望を考えられるステージに!
最近注目の技術であるAIを絡めながら、ゲーム業界の未来の展望を語るステージの様子をお伝えしてきた。
ヨコオタロウ氏という著名なゲームクリエイターによる、AIの考え方というものはとても興味深い内容だった。特に「AIはあくまでも道具で、使う人次第」という考えには筆者もハッとさせられた。開発にAIを使用するゲームも増えていくであろう中で、どう向き合うべきかの答えが少し見えてきたのではないだろうか。
ステージ上でヨコオタロウ氏が語ったようにAIによるゲームの開発サポートだけでなく、AIによるプレイヤー体験の向上などにも期待しつつ、今後のゲーム業界の動きに注目していきたい。
『インテル株式会社』の概要
『ゲームクリエイターズギルド』の概要
© Intel Corporation
[取材協力:インテル株式会社]
(編集・執筆/きりゅう)